採用には大きな三つの壁がある。
まず、応募者を集めるという壁である。
黙っていても、多くの応募があればよいが、そう簡単にはいかない。
以前になるが、大手の素材メーカーのテレビ宣伝をよく見かけた(アルパカの会社が代表例である)。最終製品を扱っていないため、表にその名が出にくいがゆえの宣伝活動だと思われる。
これも、なんとか学生(とその親)に自社を見つけて欲しいという、切実な願いのこもった施策であろう。
しかし、大手企業なら、そのようにPRにお金をかけることができるが、中小企業では、その手法は取ることが難しい。
すなわち、母集団を多く得る手法は、中小企業にはあまり向かないのではないかと思われる。
次の壁は、採用できないという壁である。
面接や試験をしても適切な人がいない、適切な人と思って内定しても辞退される。
採用の基本は「相思相愛」である。
これは、企業に限らず、あらゆる組織の鉄則であるが難しい。
相思相愛は、表面的な条件よりもどちらかと言えば、気持ち、感情の問題が大きい。
だからこそ、中小企業はトップが前面に立って、会社の理念・創業の想い(あるいは創業時から受け継がれてきた想い)・お客様へのお役立ちの決意・商品やサービスへの愛着・未来への期待と構想・社員に対する愛情など、感情面にも直接働きかけることが大事である。
自社への共感・期待を得ることがこの段階のポイントだ。
他社と比較している段階だからこそ、働きかけに心を動かされるはずだ。
最後の壁は、採用したものの、早期に退職してしまうことである。
せっかく相思相愛になり、採用しても長く続かないケースも多い。
採用段階での見誤りもあるだろうが、採用してから「思っていたのと違う」というギャップを感じ、相思相愛ではなくなってしまうこともある。
この段階まで来てしまうと、退職は組織に相当なダメージを与えてしまう。
かといって、合わない人が居つづける方が、更にリスクは高くなる。
入社してから、手間暇かけて育成し、自社を本当に好きになってもらい、
必要な能力を磨いてもらうことが一番望ましいのだが、現場の負担も大きくなる。
育成も、大切な業務ではあるが、できることなら、選考の段階で自社に合う人を見つけておくに越したことはないのである。
このように考えると、採用・育成では新卒採用、中途採用に限らず選考段階が重要となることがわかる。
いかに相思相愛の関係を作るか、その働きかけ方が最も重要である。
自社が欲しい人材像を明確にし、その素養のある人に向かって熱心に説くことは、トップだからこそできる仕事である。
20150916 ジェックメールマガジンより加工