サービスエンジニア

パワーアップ実践講座 サービスエンジニア指導編 仕事観の切り替えで、メンバーの行動を変える

「お客様のことを考え、お客様の立場に立った行動がとれるサービスエンジニア」を育てたい。 しかし、お客様はそれぞれです。決まった対応の型はありません。具体的に何をどう変える指導をすればよいのでしょうか? リーダーが取るべき指導についてご紹介します!


研修を希望される企業の教育担当者から「もっとお客様のことを考えた行動をとれるようにして欲しい」というご要望を聞くことがあります。また、「お客様の立場に立つ」という言葉もよく聞く言葉です。
では、お客様のことを考え、お客様の立場に立った行動とは何を指しているのでしょうか?
リーダーがより具体的な行動をイメージできていないと、エンジニアへの指導の仕方も分かりません。


対応に決まった型はない
しかし、残念ながら、お客様のことを考えた行動に決まった型はありません。「この行動が取れたら、お客様のことを考えている」という明確な判断基準はありません。
A社(もしくはA担当)に喜ばれたことが、必ずしもB社でも喜ばれるとは限らないことは、お客様対応の経験から、気付いていると思います。
お客様の立場(権限や仕事内容など)はそれぞれ異なりますから、もちろん期待も異なり、期待が異なるということは、「何をしたら喜ぶか」が異なるということになります。
だから、同じことをしても喜んでもらえないことがあるのも、理論的には、ご理解いただけることでしょう。


人は「これが一番」と思って、同じ行動を繰り返す。
それにもかかわらず、現場のエンジニアは、「これで大丈夫」「この対応が一番」と思って、同じ対応を繰り返すことがあります。

例えば、「完全対応(恒久対応)が必須」と考え、どんなに時間をかけても完璧な対応をしようとするエンジニアがいます。仮に、お客様が急いでいて、仮対応が可能な機械であっても、です。
急いでいるお客様の場合、「違い!」という苦情になることは予測が付きます。
では、このエンジニアが苦情を受けたら、上司としてどのように指導したらよいでしょうか?
①「仮対応をしなさい」
②「もっと、お客様のことを考えて対応を変えなさい」

①ではよくないですね。仮対応が向いていないお客様もいらっしゃいますので、固定の行動を指導しては、また別の苦情を発生させてしまいます。
②では「お客様のことを考えたら、完全対応が一番良いと思ったのです」と言われてしまいそうです。
これでは、指導の成果は出そうにありません。

人は、数ある行動の中から、1つの行動を選ぶ際「これが一番良い」と無意識の中でも判断して選択します。前述のエンジニアも悪気があって、完全対応を繰り返すわけではありません。それが良いと思って行っているのです。


仕事観を判断基準に
では、同じ行動を繰り返すエンジニアと、臨機応変に対応を変えられるエンジニアの違いはどこにあるのでしょうか?

その答えが、エンジニアが持っている仕事観です。「自分の仕事は機械を直すこと」と考えているエンジニアと、「自分の仕事は機械を通じて、お客様の業務を支援する仕事」と考えているエンジニアとでは、お客様対応に大きな違いが出てきます。

「自分の仕事は機械を直すこと」という仕事観を持っているエンジニアの取りやすい代表的な行動は次の通りです。
・機械の状況をきく
・機械を完璧な状況にする
・機械の現状を報告する
・前述のことを高いレベルで行えるようにするために、技術の向上を図る

一見、良いエンジニアに見えますが、すべての判断基準は「機械を直す」であり、そのために必要な行動です。報告も「機械が動いている」ことを原因も含め正確に伝えます。
このエンジニアに、「お客様」を考えた行動を期待するのは難しいでしょう。どうしても「機械」のための行動になってしまいます。

では、「自分の仕事は機械を通じて、お客様の業務を支援する仕事」という仕事観を持っているエンジニアの場合、どのような行動が見られるので
対比をすると以下の通りです。
・業務の状況をきく
・業務が滞りなく行える状況にする
・業務への影響について現状を報告す
・前述のことを高いレベルで行えるようにするために、技術の向上とお客様の業務について理解を深める

判断基準が「お客様の業務を支援する」になりますので、業務のことが気になるはずです。そして、業務の現状が分かれば、何が最適かは、機械のプロとして判断できるはずです。例えば、「完全対応が良いか、それとも仮対応すべきか」も判断できるでしょう。

すなわち、お客様のことを考えた行動がとれるエンジニアを育成しようとするなら、自分の仕事に対する考え方、仕事観を変えていくことが必要なのです。

「エンジニアの仕事は、お客様の業務を支援する仕事」と自覚させるには、上司が繰り返し言うだけでは、あまり意味がありません。本人に実感させる必要があります。

実例で、エンジニアの仕事の結果、お客様の業務に与えた影響を共有する時間を創ってみてください。
・ダウンタイムの軽減によって生産性向上
・メンテナンスにより光熱費削減
など、おそらく事例はたくさんあるはずです。そこにお客様の喜びの声が入ると、より実感できるでしょう。


【お客様の業務を支援する行動がとれるエンジニア育成のためのチェックポイント】
□取り扱っている機械やサービス内容とお客様の業務の連動を整理していますか?
□メンバーが仕事の成果を「お客様の業務支援」の形で体感できる仕組みを提供していますか?
□メンバーの仕事観まで意識して指導していますか?

弊社「行動人460号」より転載。

*シリーズまとめ読みはこちらから!*

●なぜ、お客様に役立つ提案は、エンジニアの本来業務なのか?
●仕事観の切り替えで、メンバーの行動を変える
●受け身体質を改善する
●専門技術と対人能力のバランス
●ファン客創造につなげる苦情対応

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