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パワーアップ実践講座 新人編 「主体的に働く」を考える

企業が「社員には主体性を持って仕事をしてもらいたい」と言っても、いざ入社して働いてみると「まずは上の指示に従って」と指導されることがあります。それに対して、「上から指示された仕事を、ただ機械のようにこなしていくだけ。自分はもっと人間的に、主体的に仕事をしたい!」と新人が感じることは少なくありません。


こんなお悩みが届きました。


「製造業で働くAです。今の会社で働き続けることが嫌になってきました。
理由は会社の体質にあります。会社はメーカーとしてさまざまな商品をお客様にお届けしています。
私自身も、お客様に使っていただけるような、良い商品をつくる仕事がしたいと思って入社しました。
しかし、いざ働いてみると、先輩のお手伝いみたいな仕事ばかりで、自分で何かをつくるなんて事はできそうにありません。しかも先輩たちを見ていると、さらにその上の先輩の助手みたいなことばかりやっています。上司の言いなりで仕事をしていて楽しいのでしょうか。
こんな会社では、自分も上から下ろされた仕事を、ただ機械のようにこなしていくだけの人間になってしまう…、そんな気がしてほとほと嫌になっています。私はもっと人間的に、主体的に仕事をしたいのです」

Aさんのように、仕事で「自分の力を発揮したい」「主体的に取り組みたい」と思う気持ちはとても大切です。
たとえ最初は「就職できただけでもありがたい」と思っていた人でも、仕事をしているうちに「自分はこうしたい」という思いが生まれてくるのは当然です。
また、企業側もそのような社員の主体性を期待しているはずです。っまり、「自分で考え、行動し、個々の力を発揮して会社を発展させてほしい」というのが、企業(または上司)の考えではないでしょうか。

しかし、企業が「社員には主体性を持って仕事をしてもらいたい」と言っても、いざ入社して働いてみると「まずは上の指示に従え」と指導されることがあります。
すると、Aさんのように「もっと主体的に仕事をさせてほしい」という思いが出てくるようです。いったいなぜ、このような状況が生まれてしまうのでしょうか。

「主体的」のとらえ方
実際のところ先輩たちはどう考えているのでしょうか。あるメーカーに勤めるBさんに聞いてみました。

「私はこの会社に入って企画の仕事をするつもりでした。ところが、入社して配属された先は、製品をつくっている協力会社。今は職人の下で製品づくりの修業をしています。もちろん、すぐには中心的な仕事はさせてもらえません。今も部品を磨いたり、基本的な裁断の仕事などを地道にやり続けています。最近やっと『製品をつくっているな』と感じられる作業に加わらせてもらえるようになりました。
配属先を開いた時はびっくりして、『企画を希望していたのに』とも思いました。しかも、職人と同じように製品づくりを手掛ける立場になるには、少なくとも十年はかかります。ある程度技術を身に付けたら本社に戻るようなことは聞かされていますが、四年たった今もまだ修業中です。自分のやりたい仕事ができるようになるのか、不安になることもあります。」

では、なぜ四年以上経った今でも続けられているのか聞いてみました。

「最初は、会社や職人から言われたからやっているという状態で、何も面白いことはありませんでした。でも、半ばやけになりながら、どうせやるなら誰よりも良い製品を短時間でつくってびっくりさせてやる!と思って真剣に取り組んでみたんです。
すると、少しずつですが、取り組んでいることの意味がわかってきたのです。周りの人からも信用されて、徐々に難しい仕事を任されるようにもなりました。今では職人に対して『こういうふうにした方がいいんじゃないですか?』と意見することもあります。最初は『何もわからんくせに!』と言い返されることもありましたが、最近は意見交換することが普通になってきました。本社に戻ったら、ぜひ、この経験を活かしたいと思っています」

自分の取り組み次第で状況は変わる
もしBさんが、会社から言われた仕事に対して、「上から指示されたことを地道にやるのは主体的ではない」と不平をもらして真剣に取り組まなかったり、ただ言われたとおりに繰り返したりするような仕事ぶりだったら、状況はどうなっていたでしょうか。
会社からはきっと、厳しく「指示したとおりにやりなさい」と言われ、ますます前向きに仕事に取り組むことができなくなっていたことでしょう。ミスをした時には「ちゃんと考えて行動しなさい」とも言われるかもしれません。

AさんとBさんの違い
Aさんは「指示に従って地道に努力をすることは、主体性のない行為」として嫌気がさしているようでした。しかし、Bさんの話を振り返り、参考にすると次の二点が見えてきます。

①「地道な努力をする」というのは、ただ指示に従って言われたことを受身で行うことではなく、「自らその意味を考えながら、まずは真剣に取り組んでみる」こと
②「主体性」とは、ただ自分のやりたいことをするのではなく、自ら積極的に取り組むこと。また、その結果として成果を挙げ、信用を積み重ねることで、さらに主体性を増して仕事をしていくことができるようになる

皆様は、AさんとBさんの考え方のどちらを強くお持ちですか。

《チェックしてみよう》
以下の項目を読み、ご自身の考えと同じ場合にはチェックをいれてみましょう。

□言われたことを言われたとおりに行うのは、性に合わない
□自分は優秀だから、他の新人と同じように基礎を学ぶ必要はない
□言われたとおりにやってうまくいかなければ、上役のせいにすればいい
□仕事を指示されたとき、「真剣にやろう」というよりは、「さっさと終わらせたい」という意識が先に出る
□会社のマニュアルはほとんど使わない(自分で買ったビジネス本の情報が頼りだ)
□「この人の言動をまねよう。この人から学ぼう」という人が会社にはいない
□言われないことはやらなくてもいい
□会社で自分の個性を発揮するのは無理な話だ
□会社では、偉くなりさえすれば自分のやりたいようにできる
□相談しながら仕事をするよりも、全部自分のやり方で仕上げた方がいい仕事ができる。

チェックが多く入るようであれば、Aさんのような考え方に偏っている可能性があります。


弊社「行動人445号」より転載。一部加筆しました。

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