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パワーアップ実践講座 営業力強化編 需要創造のヒント ~なぜ、あの花屋は売れるのか~

ある地域の比較的小規模な公会堂の近くに、何軒かの生花店があります。公会堂で開かれる発表会などで、発表者に花束をプレゼントするための需要が見込まれるからです。 不思議なことに、ある一軒の生花店は、他の店の倍以上の売り上げがあるそうです。立地や品揃え、品質、価格は他の店とさほど変わりません。皆さんはなぜだと思いますか? 需要創造の発想のヒントがそこにあります!


《Q》私どもは、昔ながらの既存品を売っています。しかし、数年前から業績は頭打ちで、売り上げの数字は伸び悩んでいます。
上司からは、「お客様から新たな用途の開発案件を引き出してこい。営業が案件を持ってこないかぎり、新製品の開発はできない」、「同じ製品でも、見方を変えればまだまだ売れる要素は多分にあるはずだ。それを発掘するのが営業だ!」とハッパをかけられています。

ところが、今まで新用途の提案などしたことがありませんし、そもそも新用途と言われてもアイデアが湧いてきません。

例えば、身近なものではどんなものがあるのでしょうか。また、どんな見方をすれば、同じ製品から新たなニーズを発掘できるのでしょうか。答えがないのは分かっています。何か、ヒントをもらえないでしょうか。(メーカー営業 山田)

《A》新たな需要が見込めない市場において、同じような悩みを抱えている組織は多くあります。考え、動くヒントになれば幸いです。

§ヒント1§ 市場変化による必要性を発見し、既存用途の発想を打ち破る
周囲を見渡してみると、新たな用途によって需要が創られているものが意外に多くあります。
例えば「PC眼鏡」はブルーライトをカットして目の負担を減らすために開発されました。パソコンやゲーム機、スマートフォンなどが普及し、それらを使う時間が増えたからこそ、需要が生まれたといってもよいでしょう。
これこそ、「眼鏡=視力を矯正するもの」という概念を打ち破った、眼鏡の新しい用途です。
眼鏡の別用途として、まぶしさを避けるサングラス、水中で使う水中眼鏡、またファッションで着ける「だて眼鏡」などがありますが、PC眼鏡は「眼鏡をかけない人が必要とする眼鏡」として新たな用途を提案し、新需要を創り出しています。


§ヒント2§ お客様のその先のお客様を発想の基点として考えてみる
少し遠回りに思えるかもしれませんが、お客様のその先のお客様に目を向けてみてください。

お客様の需要が高まれば、われわれの需要も高まる可能性が出てきます。お客様が、その先のお客様に今まで以上に選ばれるためには何が必要なのかと考えてみるのです。

ここで、ある生花店の事例を紹介しましょう

ある地域の比較的小規模な公会堂の近くに、何軒かの生花店があります。公会堂で開かれる発表会などで、発表者に花束をプレゼントするための需要が見込まれるからです。
不思議なことに、ある一軒の生花店は、他の店の倍以上の売り上げがあるそうです。今まで花束を持っていかなかったような人までその店で花束を買い、発表会に持っていくようになっているというのです。
立地や品揃え、品質、価格は他の店とさほど変わりません。皆さんはなぜだと思いますか。

結論から申し上げましょう。

答えは「花束の中に、小さなおもちゃが入れてある」からです。聞けば「ふ~ん、そうなの」という程度のことかもしれませんが、その生花店が花束におもちゃを入れた理由をひもといてみましょう。
・お客様=発表者に花束をプレゼントする人
・ニーズ=プレゼントを渡す相手(発表者)に喜んでもらうこと。できれば、発表者に誰からプレゼントされたかを覚えてもらうこと(その理由は、大勢の人から花束をもらったら、誰からプレゼントされたかを忘れてしまうからです)
・お客様のお客様=発表者(公会堂で行われる発表会の発表者として比較的多い層は、小学校の低学年の子ども。実はここがポイントです)
・ニーズ=もらってうれしいこと。喜ぶこと

一般的に花束のプレゼントはうれしいものです。しかし、花束を受け取るのが小学校低学年の子どもだということを考えてみましょう。私が子どもだったらお花よりもおもちゃをもらった方がうれしいでしょうし、「〇〇さんからおもちゃをもらった!」と記憶にも残りやすいでしょう。それにいただいたおもちゃを飾っておけば、発表会の思い出にもなります。

この生花店は、お客様(プレゼントする人)のその先のお客様(発表者)の隠れているニーズを満たすことによって、選ばれる店になっているのです。

この事例で、もし山田さんがこの生花店を担当しているおもちゃメーカーや販売店の営業担当者で、このような新用途の提案をしたならば、
おもちゃが売れる➡生花店の花束が売れる➡花束を買ってプレゼントした人が喜ぶ➡花束をもらった人が喜ぶ➡山田さんの企業がもうかる➡山田さんが感謝され、営業に誇りが持てる...と続いていくことでしょう。

つまり、需要を創造することで、皆が幸せになっていくサイクルが回っていきますね。

この生花店のように、お客様のその先のお客様が求めていることは何か、ここを発想の基点として考えてみてはどうでしょうか。考えてみるだけではなく、行ってみる、開いてみる、買ってみる、使ってみるとよいでしょう。

思考が行き詰まったときは、世の中を見渡してみて、「この人、この商品、このサービス、このお店、この企業はどうして売れているのか」と発想してみてください。売れている、売れ続けているのには訳があります。

アイデアはいきなり出てくるものではありませんし、どこからか降ってくるものでもありません。とことん考え、試行錯誤するからこそ、見えるものや気付くものが変わってくるのでしょう。

需要を創造するための発想の基点は、「お客様のその先のお客様の満足向上です。
成功体験を通じ、「お客様がその先のお客様に選ばれる価値を、お客様と一緒になって創り出す」ことが、山田さんの営業活動の判断軸になることを願います。

そして需要を創造することが喜びとなり、誇りとなる営業になることを期待します。


*この記事は行動人449号より転載、一部加筆しました。

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