サービスエンジニア

ビジネスパーソンの悩み解決相談室 サービスエンジニア編 お客様に最適な環境を提供する

「お客様に感動を提供する(カスタマーディライトを実現する)ために」シリーズ第2弾です。今回は「エンジニアだからできる提案営業」についてお話しします。相談室に届いた内容のように「提案活動をすればせっかく築けたお客様との信頼関係が崩れるのでは…」と思われる方は少なくないのではないでしょうか。


お客様に感動を提供する(カスタマーディライト実現)ための活動の一つに、「提案営業」があります。
「営業」と聞くと「会社から、やるようにとは言われているけれど…」と、戸惑う方も多いのではないでしょうか。
今回は、「エンジニアだからこそできる営業活動」について触れてみたいと思います。

Q:お客様との信頼関係を崩さずに営業活動ができますか?
年度が変わり、方針として「全員営業」が打ち出されました。これまでも、私たちエンジニアにも「販売するように」という指示は出ていましたが、お客様からのご要望がない限りは販売していませんでした。
しかし今年度はそう言ってもいられないようです。習ったとおり、積極的に取り組んでいきたいと考えています。
ただ、あまりやりすぎると、せっかく作り上げたお客様との信頼関係を壊しそうで怖いというのも本心です。
うまく対応しながら、結果を出すことはできるでしょうか。

A:お客様の問題を解決しようという意識を!
お客様の問題を中心に話を展開する
自分勝手な行為は、営業活動ではなくても信頼関係を崩します。
例えば、整備対応後に機械の周りを掃除しますが、周囲にあったお客様の道具を「見た目が悪いから」と勝手に他の場所に収納したら、「何、余計なことしているんだ!」とお叱りを受けますね。
自分勝手な行為は、いくらあなたが良かれと思ってやったことでも、「余計なこと」「こちらをわかってくれない」といった悪い感情を引き起こし、信頼関係を崩してしまうのです。

では、提案営業の場合、どのような行為が自分勝手なのでしょう。

「現在利用している機械の後継機にリプレースすれば、処理スピードが倍になりますから、お客様の生産ラインの場合は生産量を1.5倍にすることができます。いかがでしょうか!」という提案をしたとします。
この提案を「生産量を上げたい」、または「現在のスピードには問題がある」と考えているお客様であれば、「良い商品を提案してくれてありがとう」と、より信頼関係が強固になりますね。
ところが「不景気で生産ラインをストップしなくてはならない」と苦しんでいるお客様の場合、この提案をどのような気持ちで聞くことになるでしょうか。

このように、どんなに良い商品やサービスも、お客様が望まないものをお勧めすれば、お客様に不快な感情を与えてしまい、「大きなお世話」となりかねません。お客様の要望(「問題」の解決)に合った提案が必要です。

「問題意識」を共有する
では、お客様が解決したい「問題」は、どのように知ることができるのでしょうか。
お客様がそれを言ってくださるのであれば何の苦労もないのですが、そうはいきません。かといって「何か問題ありますか?」といきなり聞いても、「まあ、何とかなっているよ」などと、話が展開することなく終わってしまいがちです。

このような状況で着目したいのは、私たちエンジニアだから気付けるお客様の問題です。私たちはお客様の機械を見ていますし、生産ラインなどお客様の業務の中心部に入っています。

そこで「この部分を変えたら、もっと良くなるのに…」と感じることもあるでしょう。その気づきを提案に活かせばよいのです。
例えば「毎回、修理の際に見積もりをとらないといけないのでは、ラインストップの時間も長くなって生産量も落ちるだろうな」と気付いたとします。
そうであれば、修理後の情報収集(気づき)で「今回のように修理完了までに時間がかかると、機会ロスも多いと思いますが…」と話題をふります。
「そりゃ、修理完了まで早くなれば良いけれど…」などといったお客様の反応をきっかけに話を展開させて、お客様がどうしたいのか、ニーズを引き出し、解決すべき問題を明確にします。

自分が感じた問題意識と、お客様の問題意識を共有するのです。
お互いに問題が共有できたら、「その点ですが…」とその的に絞って、提案をしていきます。

問題が解決された姿を描く
「今は見積もり完了までの時間かかっていますから、その点が解消されるだけでも、機会ロスが大きく減るのではないでしょうか」と、問題提起したとします。
この問題を解決するために、「保守契約を結ぶと良いです」と言うだけでは提案になっていません。
保守契約を結ぶとお客様にどのようなメリットがあるのか、今回の場合ならば「時間が何時間短縮されて、生産量がどのように変わるのか」が問題解決された姿であり、ここまで伝えられて初めて、「提案」になります。

このように、お客様と共有した問題が解決した姿を明確にすることで、お客様は初めて「良い提案をしてもらえた」と感じるでしょう。
このような感情を得たお客様との信頼関係は強固なものになるのではないでしょうか。

問題提起、提案といった一連の営業活動によって、信頼関係が崩れるなどということは決してありません。
ご質問のように、「提案をすることで信頼関係を崩してしまうのではないか」という不安は、普段の修理対応で良い関係を築いてきたエンジニアの多くが感じることだと思います。
ですが、整備対応も提案営業もお客様の業務上の問題を解決するという点は同じです。

問題を解決する提案は信頼関係を強固にします。エンジニアは、お客様に近い立場です。エンジニアだから見えるもの、エンジニアだから築き上げられた信航関係があります。

ぜひ、「提案営業とは、お客様の問題解決のお手伝いをすること」という行動理論をベースに、恐れずに「お客様の問題」を中心に話題を展開し、その問題をお客様と一緒に解決していきましょう。

弊社「行動人438号」より転載。一部加筆しました。

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