サービスエンジニア

ビジネスパーソンの悩み解決相談室 サービスエンジニア編 「不安」を取り除く積極的な感情対応

「お客様に感動を提供する(カスタマーディライトを実現する)ために」シリーズ第1弾です。今回は「苦情対応」についてです。一度失った信頼を回復するのは容易なことではありません。エンジニアの働きかけ次第で、お客様の感情は良くも悪くも変化します。その働きかけとはどのようなものなのか、ポイントは「感情対応」です。


カスタマーディライト(顧客感動)実現には、お客様に信頼していただくことが不可欠です。
今回は、現段階で不信感を持っているお客様に信頼していただくために必要な働きかけを集めてみました。

Q:一度失ったお客様の信頼を回復することはできるのでしょうか?
先日、機械の故障で苦情対応に伺いました。こちらのお客様は、前任者から引き継いだばかりです。初回の訪問が今回の苦情対応だったので、不安もたくさんありましたが、誠心誠意対応しました。しかし、お客様からは「本当に大丈夫?」「他の人は来ないの?」と言われてしまいました。最後には「これ、使っても大丈夫?」と念押しをされる始末です。
コースで習ったとおり、お客様の気持ちをくもうとしたのですが、まだまだ足りなかったのでしょうか。それとも、一度問題が起きると、疑われ続けてしまうものなのでしょうか?

A:共感だけの感情対応ではダメ。積極的に不安の原因を取り除く感情対応を
ご相談者はきっと、言い訳をせず、お客様のお話を伺っていたのだと思います。お客様の話を聴く行為はたいへん大切です。しかしお客様が不信感をあらわにするなど、感情的になるのにはそれ相応の原因があります。

機械の故障はきっかけの一つであり、本当の原因は機械のトラブルで「生産ラインが止まっている」などの業務への影響や、「出荷遅れの責任を負わされるのではないか…」などの立場的な問題など、別のところにあることがほとんどです。この根本の不安を取り除かなければ、いくら機械が直っても、お客様の信頼は勝ち取れません。

一度失った信頼を回復するのは容易なことではありませんが、できないことではありません。エンジニアの働きかけ次第で、お客様の感情は良くも悪くも変化します。
そこで、積極的に「失った信頼を回復する」働きかけとはどのようなものなのか、「感情対応」をキーワードに見てみましょう。

STEP1 「任せられる」エンジニアになる
対応能力のある担当者として、しっかりと「あいさつ」をして、ご迷惑をかけていることに対して「お詫び」をする。これが、苦情対応のスタートです。
この時、態度が弱々しかったり、ふそんな態度だったり、お客様の前から逃げるようにいなくなり修理に向かう…といった態度は、問題に真剣に取り組んでいないように感じられ、お客様の「任せて大丈夫なのか?」という心理につながります。
そうすると、ねじをはずしている姿一つ見ても「そのねじで大丈夫なの?」「余計なことしていない?」など疑いが生まれる恐れがあります。要するに、何をしても信じてもらえない、「任せられない」エンジニアになってしまうのです。

最初に「安心して任せてください!」という態度をとることは、機械が壊れて業務に影響が出ているお客様からすると「この人は真剣に助けてくれようとしている」と感じる行為です。エンジニアの働きかけによってお客様の感情が良い方向に動く、積極的な感情対応となります。
だから最初は「徹底したマナーと自信が感じられる声によるあいさつとお詫び」が大切なのです。

STEP2 「任せて安心」なエンジニアになる
一生懸命機械に向かって修理をしているときでも、周囲を散らかすなどのマナー違反は、お客様の「このエンジニアには任せておけない」という心理につながってしまう論外の行為です。ここでも「作業におけるマナー徹底」が望まれます。

ただ、それだけではお客様の安心にはつながりません。例えば、様子を見に来たお客様に、「ご安心ください。原因がわかりましたので、後〇分程でお使いいただけるようになります」などの、現状報告ができれば、さらにお客様に安心を提供できます。

このように「このままだと業務に影響が…」と不安なお客様に、「もうすぐ業務が再開できる」という安心を提供する行為も、積極的な感情対応のひとつです。この感情対応が「任せて安心」という心理につながっていきます。

STEP3 「任せて良かった」エンジニアになる
修理が終了して報告をする際、お客様が一番知りたいこと(結果)から報告することは、コース内でも触れたとおりです。実はこの報告もお客様の不安を取り除く、感情対応なのです。

もしここで、故障原因や自分がやったこと(修理内容)だけを先に伝えて、結果を伝えずにいたら、お客様は「だから、機械はどうなの?大丈夫なの?業務はどうなるの?」と不安になってしまいます。
逆に最初に結果を伝えることで、「やっと業務が再開できる」と、まず「安心」していただくことができます。報告も、感情対応の一つなのです。

さらにここで、今後の取り扱いについてアドバイスができれば、お客様にも「任せてよかった」と感じていただけ、信頼を回復することができます。

このように、「信頼」を勝ち取るには、お客様の「不安」を「安心」に変える積極的な感情対応の積み重ねが必要になります。そのためにも、まず、お客様の不安の元をつかむことから始めなくてはいけません。修理に入る前に「引き出し」で不安をはきだしていただく際、私たちはお客様の不安を知ることができます。

お客様の不安の元をつかみ、その不安を取り除き、安心を提供する。その繰り返しによって、信頼を回復することができます。
コースでふれた「サービス精神の源泉」の中には、次の項目があります。
「目に見えず、耳に聞こえぬ『心の想い』は、目に映る形や姿や、耳にする音や声にしなければ伝わりにくいと認識して、『見えない心』を表現できて初めて一人前であるという気持ちを持つ(表現者の心)」

「安心してください!」「信頼してください!」という想いを、態度で積極的に表現していきましょう。

弊社「行動人437号」より転載。一部加筆しました。

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