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ビジネスパーソンの悩み解決相談室 営業パーソン編 自分の目標さえ達成すればいいのでは?

目標を達成しているのに、上司からは「自分一人サッサと目標を達成したらそれでおしまいというもんじゃない。営業所はチームなんだから、チーム全体としていかに目標達成するかを考えて行動してくれなきゃ」と言われました。 あなたはどう思いますか? 今回のお悩みはそんな営業パーソンからです。 営業の特性と組織風土が解決のポイントです!


《Q》個人目標を達成しているのに、評価してもらえません
新しい上司とどうしても肌が合いません。新卒で入社して以来5年間、ずっと生命保険の営業をやってきて、初年度を含め目標は毎年達成してきました。だからこれまでの上司は「キミはうちのエースだ」といって、私を尊重してくれました。

ところが今度の上司は、「自分一人サッサと目標を達成したらそれでおしまいというもんじゃない。営業所はチームなんだから、チーム全体としていかに目標達成するかを考えて行動してくれなきゃ」と言うんです。
まったく冗談じゃありません。私だって楽をして達成しているわけじゃなく、工夫も努力もしています。

そもそも目標を達成できない社員はやる気に乏しいんです。一人ひとりが責任感を持って目標を達成すれば、当然チームの目標も達成できるはず。それなのに、目標を達成している私がチーム全体のことまで考えなくてはならないのでしょうか?


《A》フォロワーシップを発揮して、風土悪化を防ぎましょう
このご質問、とても他人事とは思えません。なぜなら私自身も過去には「自分さえ達成すればいい」と本気で考えていた時期があったからです。なぜ、そう思っていたのか。なぜそれが自分にとってマイナスなのか。ここに気付けるかどうかは、企業人としての人生において極めて重要だと、今は感じています。まず、営業という仕事の特性について考えてみましょう。

企業には営業職以外にも、総務や人事、経理や財務、企画や開発、それに製造など、数多くの仕事があります。これらの仕事と営業を比較すると、三つの大きな相違に気付きます。
 ①営業活動の現場を誰にも見られない
 ②成果の大部分が数字で評価される
 ③日標を達成すればプロセスは問われにくい
このような、営業ならではの特性から、どういう意識や現象が引き起こされやすくなるでしょう。

例えば「数字さえ上げればいいんだ」と、お客様へのお役立ちそっちのけで手っ取り早く数字に結び付きそうなアプローチに偏ってはいないでしょうか。

「誰も見てないし、ちょっと疲れたから」と、ついつい休題が増えてはいないでしょうか。

「どうせ自分はこの程度」と自分の才能に見切りをつけ、マンネリな活動に陥ってはいないでしょうか。

「目標の達成は当たり前」と考える方にはわかりにくいかもしれませんが、いずれの意識も人間であるがゆえの弱さに起因する落とし穴であり、やみくもな努力では容易に打破できない問題なのです。

にもかかわらず、「自分さえ目標を達成すればいい」という意識を放任するとどうなるでしょう。チーム内は達成者と未達者とに分かれます。達成者が大勢を占めていればさほど問題ではありませんが、昨今の市場環境はそう簡単ではありません。
また、逆に未達者が多いと、「あいつだって未達なんだから」と、未達を容認するような空気が次第にまん延し始めます。

このような空気が広がるとチームの勢いは、そして組織風土はどうなるでしょうか。もちろん停滞し始めます。風土が停滞すると、努力することが極めて困難な雰囲気となり、未達者がさらに増えます。すると、さらに未達ムードが進行し、より停滞感が強まり...。こうして風土悪化のスパイラルに陥るのです。そして気付くと、目標の達成者はたったの一人か二人...。

もうおわかりでしょう。未達が当たり前になってしまったチームの中で、自分ひとりが目標を達成し続けるのがいかに困難なことか。優勝を競っているチームと優勝をあきらめたチーム、選手が活き活きと輝いているのは一体どちらでしょう。

営業パーソンは個々人が数字の責任をリアルに背負って生きている。だから、自分の目標さえ達成すればよいという意識になりやすいのはわかります。だからといってそれを良しとしてしまうと、めぐり巡って「風土の悪化」という形で自らを害することにつながるのです。

もう一度、前述の営業の仕事の特性を思い出してください。誰にも見られない、数字だけで評価、プロセス軽視。こういった特性は怠惰や安易といった人間の弱さを簡単に露呈します。

営業の仕事は、活動のモチベーションを維持・向上させ、弱さに打ち勝つことがその本質ともいえます。このことからも、組織風土の影響が大きいということはご理解いただけるでしょう。

では、チーム全体の目標達成のために何をやればいいのでしょうか。その答えは、「フォロワーシップを発揮する」ことです。

フォロワーシップとは、現在の立場より一段高い視野で仕事をとらえ、それに基づいて行動することです。フォロワーシップの意識の高い営業パーソンは自ずとチーム全体の達成を考え、行動します。

その背景には「上司(例えばチーム全体の責任者)の責任は自分の責任でもある」という意識があり、与えられた目標をただ達成する、上司の指示に基づき業務を遂行するといったこととは全く異なる発想に立っているのです。

具体的には、次のようなものが挙げられます。
*チーム全体に勢いをつけるためのキャンペーンなどを企画し提案する。
*業績低迷者に積極的に働きかけ、支援もかってでる。
*上司の打ち出した方針をしっかり腹に落とし、率先垂範でチームへの浸透に努める。
*報連相を密にし、タテヨコの情報共有を促進する。

一方で、メンバーにフォロワーシップを発揮された上司は、とても仕事がしやすく、リーダーシップが発揮しやすくなります。

そして上司のリーダーシップがより機能すれば、チームに勢いと結束力が生まれ、自ずと「チームの目標達成にチャレンジしよう!」という機運が高まっていくのです。それが一人、二人と達成者を増やし、最後まであきらめない姿勢を生み出します。やがてハイレベルでの切磋琢磨につながり、誰もがチーム目標の達成を第一に考える信頼の集団へと発展するのです。

フォロワーシップはマニュアルで決められた「義務」ではありません。組織の一員として真の責任を感じる「心」なのです。自分だけが目標を達成して良しとするか、フォロワーシップを発揮して「達成する集団づくり」に寄与するか。最後は営業パーソン自身が決めることなのです。

営業を通じて自分の個性を活かし、真価を発揮するためにも、組織と自分の可能性を信じて行動し、活躍することを切に願います。


*この記事は行動人439号より転載、一部加筆いたしました。

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