マネジメント

ビジョン・方針が絵に描いた餅にならないために

ビジョンや方針について、一般社員にとっては「方針は聞いたことがある程度」「日常業務での行動と方針やビジョンを結び付けて考えたことはないし、関係を示されることもない」というようなことはないでしょうか。 「掲げるだけ」ではなく「教育」が必要です。


ある企業のビジョンづくりの取り組みの場で、次のようなやり取りがあった。
トップ:「ビジョン浸透がうまくいっているところは、ビジョンや方針をつくって
示して終わり、ではなく、その後の教育をやっている」
部長:「スキルの教育ですか?」
トップ:「いや、考え方の教育が必要だ」

そのやり取りを聞いていた私は、トップが何をすべきか理解されているので、いずれ必ずビジョンは達成できると感じた。

ドラッカーは、『経営者の条件』の中で、次のように書いている。
「意思決定を行動に変えるには、「誰がこの意思決定を知らなければならないか」
「いかなる行動が必要か」「誰が行動をとるか」「行動すべき人間が行動できる
ためには、その行動はいかなるものであるべきか」を問わなければならない。
しかしこれらのうち、特に最初と最後の問いが忘れられることが多い。そして、
そのためひどい結果となる。」
(P.F.ドラッカー(1995)ドラッカー選書1『[新訳]経営者の条件』上田惇生訳,ダイヤモンド社, p.186)

トップがビジョンや方針を決めたのなら、それを実行するメンバーに知らせ、どんな行動が必要かを周知し、一人一人に期待する行動を示すことが必要になる。これらを先のトップが言う「教育」と考えてよいと思う。

多くの企業で、ビジョンや方針が「ただ掲げられているもの」でしかないのは、
この「教育」を怠っているからに他ならない。

ドラッカーの言う「忘れられる二点」である「知らしめること」「どのように行動するかを知らせる、行動できるようにする」に関しても、実態としては、
・一般社員は、方針は聞いたことがある程度
・一方、管理職は「伝えている」つもり
・日常業務での行動と方針やビジョンを結び付けて考えたことはないし、
関係を示されることもない
・ビジョンや方針に基づいた教育訓練ではなく、毎年同じ研修の繰り返し
というようなことが多い。

「意思決定を実施に移し、成果をあげるためには、関係者が行動や習慣や態度を変えること」(同p.189)
が必要であり、そのための「意識改革」がポイントになるのだが、多くの場合、ビジョンや方針をつくって満足してしまう。

ビジョン実現には、ビジョンづくりだけではなく、その後の「教育」が
必要なことを改めて訴えたい。

 

ジェックメールマガジン2022.5.12より

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