社内連携

リモートワーク下の雑談

テレワークのマイナス面が多数指摘されている。従業員が孤立する、モチベーションが保てない、従業員間の絆を形成できない、コミュニケーションがうまくとれない等々、たくさんあることは間違いない。明らかに心理的な距離は広がっている。今、何とか仕事が回るのは、お互いに「きっとこんなことで困っているに違いない」と推察しつつ支援したり、「彼の傾向からこういうことを注意しておこう」といった「コロナ禍以前の関係性」が生きているからではないか。


テレワークのマイナス面が多数、指摘されている。
従業員が孤立する、モチベーションが保てない、従業員間の絆を形成できない、コミュニケーションがうまくとれない等々、たくさんあることは間違いない。
明らかに心理的な距離は広がっている。

今、何とか仕事が回るのは、お互いに「きっと、こんなことで今、困っているに違いない」と推察しつつ、支援したり、「彼の傾向から、こういうことを注意しておこう」といった「コロナ禍以前の関係性」が生きているからではないか。
それがない新入社員は本当に孤立していると思う。

そして、「雑談」も激減した。
テレワークで「雑談」をしようと思ったら、web会議ツールで誰かにつながなければいけない。
残念ながら、それは、給湯室で始まる偶発的な「雑談」ではなく、既に意図的な「会話」だ。

外山滋比古の著作に「ルーナー・ソサエティ」というイギリスのバーミンガムで
18世紀半ばから19世紀初頭まで催されていた、非公式のクラブの話が出てくる。
(『知的生活習慣』2015,筑摩書房、『乱談のセレンディピティ』2016,扶桑社文庫)

「ルーナー・ソサエティ」は、夜遅くなってもちゃんと帰れるようにと満月の日に集まり、たわいもない話をするだけの会なのだが、創立したのがダーウィンの祖父。
他にも、蒸気機関を実用化したジェームス・ワット、酸素を発見したジョセフ・プリーストリー、ガス燈を作ったウィリアム・マードック等がメンバーだった。

このことから、イギリスの産業革命において、「ルーナー・ソサエティ」が大きな役割を果たしたものと考えられている。
そして、その本質は、「様々な分野の人の雑談」にあったとされる。雑談がきっかけで、蒸気機関の改良、ガス燈他のイノベーションが起きたのだ。

雑談が「イノベーション」をもたらすということは、現代においても変わらないだろう。
実際、いくつもの発明、改良は「雑談」をきっかけに生まれている。
研究者の文章を読むと「雑談から、発想した」というような記述がいくつもある。

この一年半で、私自身も雑談の量は格段に減っている。ほぼ、ないに等しい。
会社に行かない、行ったとしても個々、離れて静かに仕事をし、ランチでどこかの会議室に集まって食べることもない。それでも「今の仕事」は回っている。

同様のことが世界中で起きている。
つまり、「雑談」というイノベーションの機会が、全世界で大幅に減っているということになる。大げさに言えば「世界的なイノベーションの危機」だ。

これを代替する取り組みがないことはないのだが、実態として「オンライン飲み会」や「会議の前の雑談タイム」等で十分な機能補完がなされているとは思えない。
アバターを使って、仮想空間で仕事ができるようになればよいが、まだそこまではいかない。
今のところ、コロナ禍以前の人的接触が戻ることを期待するのみだ。

20210727ジェックメールマガジンより

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