組織改革

仕組みの弊害

ある現場が「現場の課題を報告する仕組み」を導入し、各部門に毎月の報告数の目標値を設定した。 状況を聞くと、「率直な意見が寄せられ、改善につながっている」「若手でも意見が言いやすい」等の声が聞かれ、施策そのものに誤りはないように見えたのだが…。


ある現場が「現場の課題を報告する仕組み」を導入し、各部門に毎月の報告数の目標値を設定した。
状況を聞くと、
「率直な意見が寄せられ、改善につながっている」
「若手でも意見が言いやすい」
等の声が聞かれ、施策そのものに誤りはないように見えた。

しかし、
・これまでは、直接相談があって解決していたものが、この仕組みで上がってくるようになっている。
・「些細なこと」まで上がってくるが、公式のシステムなのですべてに対応しなければならない。
「些細なこと」とは「掲示板のポスターが、はがれかけているので、もっと強力なテープで貼るべきだ」「エントランスに植えてある木が高く伸び過ぎているのでは」というようなことまであるとのこと。

おそらく、これらの改善提案は、生産性にはほぼ寄与しない。
それでも「仕組み」としては、全てに対応せざるを得ないので、「こう改善します、しました」という報告を掲示しないといけない。

直接言ってもらえば、時間もかからず、言った人の意見も反映され、また、取り組まない課題だとしても、取り組まない理由をその場で伝え、別の解決策を探ることもできる。
つまり、仕組みとしては有効そうでも、結果的に業務の効率化を阻むことになってしまっているように見える。

そもそも、ポスターがはがれていれば、見つけた人が貼り直せば良い。
風が強い等はがれやすいところに貼っているなら、別の場所に貼ればよい。
生産性や安全に障害があるなら別だが、木は定期的に剪定しているので、いちいち言ってこなくてもよい。

なぜ、うまく行かないのか?
本質的なところで、「何のためにやるのか?」が明確でないこと、その上で「問題のとらえ方が誤っていること」が考えられる。
この仕組みの目的が生産性や業績の向上であることがはっきり理解されていないので、無理やり課題を探させることになっていることも問題だ。

目標値が与えられた時点で、人事考課につながっていることは推察できる。
すると、無理をしてでも課題をひねり出そうとするだろう。
課題は、「探す」ものでも「見つける」ものでもない。
あるべき姿とのギャップから「創り出す」ものだが、その視点がないと、ひたすらアラを探すような行動に出る。

たくさんの課題が上がり、解決が図られているからといって、満足してはいけない。
「将来を見据えた課題の創造と解決」が行われているかを点検し、従業員にも、そういう視点を持たせる指導をしていかないと、実際は何も解決しないことは意識したほうがよいと思う。

20210414 ジェックメールマガジンより

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