コロナ禍において、在宅ワークはかなり浸透したことと思う。
かくいう私も、二週間くらい外に出ないで仕事をしていることがある。
マイクロソフトでは、東日本大震災を契機として、在宅ワークが広がったという。
2002年から「ワークスタイルイノベーション」として生産性と組織力の向上を行う中で、働き方の多様性実現にも取り組んでいた(『ハーバードビジネスレビュー』ダイヤモンド社,2022年3月号,p.55)。
「さまざまなことをしたが、結局働き方は変わらなかった。しかし途中で、重要なのは意識改革ではなく、行動変容だと気づいた。そのきっかけになったのが、東日本大震災だ。
当時の社長が、社員の安全を守りつつ事業を継続するために、震災の翌週は出社せずに自宅など安全な場所で勤務することを指示した。これをきっかけに、全社員がリモートでも業務を行えることを認識し、意識が大きく変わっていく」(同pp.60-61)
世間一般と比べると、早い取り組みで働き方改革が進んでいる会社のように思えるが、必要に迫られての「行動変容」によって、働き方が変わったのだ。
他の多くの企業では、コロナ禍をきっかけに在宅ワークを取り入れているが、その後、後戻りする会社とそうでない会社がある。
違いは、「行動変容」の後の「意識改革」が伴っているかどうかではないだろうか。
面と向かって指示を出さないと伝わらないと思い込む管理職や仕事を自律的に行うことができずにいる受け身の社員等々。
なにより、自立型の働き方へ意識が向かわないと、在宅ワークはままならない。
仕事のプロセスは見えにくくなり、結果で評価されることが増える。
偶発的なコミュニケーションは減り、自ら働きかけなければ、新しい情報は手に入らない。自律的に自らを成長させられるかどうかが問われる。
そのため、自律的な社員の育成こそ、在宅ワーク定着の肝だろう。
もう一つ、捉え方として押さえておくべきことがある。
マイクロソフトが目指したのは、「働き方改革」ではない。
「生産性と組織力を上げる」ことが目的であり、その方法の一つとして、在宅ワークが取り入れられた。
先進諸国の中でも圧倒的に低いとされる日本の労働生産性。
これを高めるためにも、マイクロソフト事例を参考にしたいところだ。
2022/4/7 ジェック通信より転載