マネジメント

報告の文化を醸成する ~安全最優先の組織をつくるために~

社会人となれば、「報告・連絡・相談」の大切さは入社時からずっと言われている周知のことである。報告の漏れや遅れ、または間違い等は、時に大きな事故や信頼損失などの不利益につながるからだ。「ちゃんと指導しているにもかかわらず、こちらから聞かないと報告がない」と悩まれているリーダーにはぜひお読みいただきたい。


安全な組織がつくられるうえでは、正確・迅速な報告がとても重要な要素であることは誰もがわかっていることです。だからこそ多くの企業では、何かあればどこに連絡するのか、その優先順位はどのようになっているか、対処すべき時の意志決定者は誰か、第一報は別にして、正式に報告する際に使用する書式はどのようなモノか等々、仕組や運用ルールが整備されていることと思います。

しかし、報告の遅れや事実と異なる不正確な報告内容が一因となって2次被害が拡大したり、1つのヒヤリハットから十分に学ぶことなく他部門で類似の事故が発生したり、と言ったケースはいまだに少なくはありません。
報連相の「迅速さ」「正確さ」が損なわれる要因の1つは、社員の「報連相スキル」の未熟さというものがあるでしょう。

しかし、社員一人一人がスキルそのものを学びトレーニングし、身についたとしてもそのスキルの発揮を妨げてしまうものが組織には存在するのです。それは権威勾配です。


リーダーの言動が 「要」

チームで行動し効率よく仕事を進めるためにリーダーを置き、リーダーの指示に従って各自が分担を果たすことが一般的です。この構造の中でリーダーと他のメンバーとの間に働く微妙な力関係の事を「権威勾配」と呼びます。

この権威勾配がきつすぎると現場のメンバーがこの勾配を駆け上がってくることができず、報連相が遅れがちになったり、忖度してあいまいなものになったり、時にはゆがめられた情報があがってきたり、ということが発生してしまいます。

メンバー側も安全な組織を実現するために勾配を駆け上がる力を磨かなければいけないのですが、より重要なのは、リーダーからのアクションになります。

経験上、特に重要なのは「忙しいオーラ」を出さないことです。
良くない報告は誰だってしたくはないでしょう。リーダーの様子を見るととても忙しそうにしている。そんな中でも報告しなければと考え、様子を見ながら近づくと何かを察したかのようにリーダーのパソコンのキータッチ速度がアップする。それを見たメンバーは「報告よりもまず現場対処を優先してしまえ」と考え、それが何事もなく処理できるならまだしも、そういう時に限って2次被害が…。

こうならないためにも、リーダーは日頃から「忙しいオーラを出さない」ことを心がけることです。メンバーが対面で報告に来たら「耳だけ」ではなく「体ごと」メンバーに向ける、メンバーの報告に対しうなずき、相槌を打ち、メモを取る。それを日々実践するだけで少しずつ勾配が緩やかになってくるのです。  

とはいえ、リーダーには多々やることがあり忙しいのは事実です。つまり忙しいオーラを出しているのではなく、出てしまっているのです。ではどうするか? メンバーにあらかじめ言っておけばいいのです。
「できる限り忙しいオーラを出さないようにする。が、今日はバタバタして出てしまうときがあるかもしれない。その時はそのオーラを突破してきてくれ」と。

 

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