組織改革

組織変更によるメッセージ

組織を活性化させようとする際に「組織図をいじり、権限や職務分掌を変えるだけ」という大企業をたまに見かける。残念ながら、それによって、上の方の人たちの仕事は変わるかもしれないが、末端の人の仕事は、たいてい変化しない。


たいていの会社には、組織図というものがある。それを見ると、指示命令系統や各部門の担当業務、人数、職務分掌などが分かるようになっている。
人事考課や仕事上の基本的な情報伝達は、この組織図に沿って上下に流れ、仕事は回るようになっている。
つまり、指揮命令系統を示したのが、組織図ともいえる。

しかし、実際に、その組織図に示された通りの流れだけで仕事をやっているかと言うと、そんなことはない。

現場の決まった業務だけを固定したチームで行っているという組織、職種は別として、多くの職場では、縦のラインだけの情報流通、指揮命令だけで仕事は回らない。情報の流通は上下のラインより、横のラインの方が多かったり、質が高かったりする。他部門の人と共同して顧客対応にあたることもある。

時には自然発生的なプロジェクトに参加していたり、中には、頼まれてもいないのに、他部門の仕事を手伝っていたりする人もいるのが、日本の会社ではないだろうか。

エンジニアリングをやっている会社で、「どこの誰に聞けばこの情報があるのかわからない」という人がいた。そんな時、社内研修の場で知り合った人が情報を持っていることが分かり、そこから支社をまたいだ勉強会がスタートしたのを見たことがある。
その後、さらに支社をまたいで、勉強会で作られた提案内容が使われていた。

この活動は、組織図には載らない。活動そのものを知っている管理者もいるが、
どこかの部門や管理者に管理されてはいない。このようなネットワークは、「協働」、「共助」で成り立っている。つまり、自発的な動きで、組織図が変わったとて、このネットワークは変わらない。
このように、実際の現場での仕事の流れを全て把握することは、たいていの会社では、困難だ。

組織を活性化させようとする際に「組織図をいじり、権限や職務分掌を変えるだけ」という大企業をたまに見かける。残念ながら、それによって、上の方の人たち
の仕事は変わるかもしれないが、末端の人の仕事は、たいてい変化しない。
そして、従来と同じように、個々人は独自の仕事のネットワークをもち、その中
で業務を進める。もっとも、組織図をいじることは、メッセージとしては有効だ。

しかし、それだけでは足りない。そのメッセージが、個々人の活動、そして自発
的な横のネットワークにも影響するように配慮しなければならない
その際に重要なのは、何よりも、個々人のやりたいこと、個性、ビジョンといっ
たものと連動させてメッセージを発することだ。

誰も、嫌々働きたくはない。自分のやりたことをやりたいし、その方向なら、
能力をいかんなく発揮するのだから。

 

2021/10/14ジェックメールマガジンより

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