マネジメント

見えないお金

「信用や人望等は、日常の中で、お礼を言う、感謝する、といったものの積み重ねでできる。この心の技術がないと、結果として仕事はうまく回らない。お店のスタッフも、お客様もついてこない。今の儲けを出すのも必要ではあるが、信用や人望などの見えないお金をためていくことが、人の成長、将来の売り上げにつながる」


およそ200店舗を展開する企業の社長と話していて、「見えないお金」という話題になった。

「信用や人望等は、日常の中で、お礼を言う、感謝する、といったものの積み重ねでできる。
この心の技術がないと、結果として仕事はうまく回らない。お店のスタッフも、お客様もついてこない。今の儲けを出すのも必要ではあるが、信用や人望などの見えないお金をためていくことが、人の成長、将来の売り上げにつながる」という話しだった。

この企業は、新入社員の段階から、マナーの重要性、礼儀や感謝の伝え方等、考え方を重視した教育を行っている。会社創設の頃から、この方針に則った教育のお手伝いを弊社でさせていただいている。

結果として、同業他社と比較して、極めて低い離職率を維持し、かつ、創業以来、売り上げを伸ばし続けている。
もちろん、考え方の教育だけではなく、仕事に必要な技術は、しっかり押さえている。

入社5年目くらいで一人前になる目安が示されていて、それに沿って技能を磨いていくようになっている。しかも、技術だけ磨いて、他社に転職するということは少ない。
「考え方の教育」が、この会社の求心力を作っているからだ。人間的な成長も促しているから、人が離れない。

この経営者は、「見えないお金」の話もそうだが、この「考え方」を現場の人にわかりやすい言葉で伝えるということに長けた経営者なのだ。
過去にも「輪投げでいえば、投げて、とにかく引っかかっていれば、向きや位置はどうでもよいから、やってみて」と「本質において一致、行動において自由」というドラッカーの言葉をわかりやすく解説していたことを思い出す。

この経営者がやっているように、「わかりやすく説明し、伝える能力」は、マネジメントにおいて、重要なものの一つだと思うが、実際には上手にできている人は多くはない。

上位方針をそのまま自部門の方針として伝える、数字以外の統合事項がないという組織は意外と多い。少なくとも、一般社員にはそう感じることが多い。

弊社では、「大工には、大工の言葉で」や「火の用心理論(火の用心と伝えるのではなく、消火器をどこどこに置いておく、火気を扱うところを特定して置く等現場行動の言葉にして伝えるという考え方)」等、方針を「現場言葉化」するということをマネジメントの取り組みで伝えることがある。それを聞いて「なるほど」と思っていただいても、実際の行動にするのは難しい。

そういう意味でも、定期的に360度診断のようなもので、上位方針が理解、行動化されているかをとらえるのも一つの手だと思う。そうでなくとも、日常的に行動をメンバー観察し、行ったことが伝わっているかを確認し、話し合う時間を取ることは必要なのだが。

 

ジェックメールマガジン2022.2.24より

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