人事総務

離職防止のためのアサーティブ・コミュニケーション

アサーティブ・コミュニケーションを身に付けることは離職防止につながるのでしょうか。上司や周囲との人間関係に悩み離職してしまう人は少なくありません。本来の「自他尊重の精神のもと、自分も相手も大切にする自己表現」であるアサーションをどう活かせばよいのか考えます。


2004年くらいから注目され始めた「アサーション」ですが、新型コロナウィルス感染拡大をきっかけにあらためて関心が増えてきています。
さらに「アサーション」以上に、「アサーティブ・コミュニケーション」の注目が高く、コミュニケーションスキルの一つとして認知されています。

今回は、アサーティブ・コミュニケーションを身に付けることが離職防止につながるか、考えてみました。

アサーションの誤解を解く

アサーションとは、「自他尊重の精神のもと、自分も相手も大切にする自己表現」です。
しかし、「日本人は自己表現が苦手」「ビジネスで活用したい(意図する方向に人を動かしたい)」などから、
アサーションは「自分の想いを伝えるための自己表現」、「上手に想いを伝えるためのコミュニケーションスキル」と誤解されることが多いようです。

 

アサーティブ・コミュニケーションとは

自己表現は、3つのタイプに分類することができます。

①アグレッシブ的自己表現
自身の気持ちをはっきりと主張するが、相手の気持ちを無視してしまい、
自分の気持ちを押し付ける自己表現

②ノンアサーティブ的自己表現
自分の気持ちを隠し、相手に合わせて、自分の気持ちを押し殺す自己表現

③アサーティブな自己表現
自分の気持ちを伝え、相手の反応を受け止める自己表現

この③アサーティブな自己表現でのコミュニケーションが「アサーティブ・コミュニケーション」です。
もちろん、アサーティブな自己表現は、相手の反応が自分の思い通りではないことがあります。それも含め受け止めるのがアサーティブ・コミュニケーションと言えます。

 

上司と部下のよくある光景

アサーティブ・コミュニケーション

表面的にみると円滑に進んでいるように見えますが、部下にとっては、このようなことが積み重なり不満が少しづつ蓄積すると、結果として離職に繋がってしまう原因となりえます。
また、上司にしても、部下が指示通り動いていると勘違いしてしまい、正確な実態を把握することができなくなります。
上記の場合、上司は「アグレッシブ的自己表現」のタイプであり、部下は「ノンアサーティブ的自己表現」のタイプです。

 

離職防止につながるアサーティブ・コミュニケーションとは

上司と部下の関係性で考えてみます。
部下は正直に思っていることが言える(本音が言える)こと、そして、上司は部下の本音に向き合えることがポイントです。このコミュニケーションが常に取れるようになると、以下のような効果が生まれます。
■部下の不満が蓄積する前に、対策を打てる
■よい人間関係を築けるので、愛着がわきやすくなる
■部下は自分の意見がブラッシュアップされるので成長に繋がる
※部下が率直に述べた意見に対して、上司からはフィードバックもらえ、自分では気づかなかった視点が拡がり、質問や意見の確度が上がってきます。

このように、より良い効果をもたらすアサーティブ・コミュニケーションですが、現場ではできていないことも多いようです。

 

アサーティブ・コミュニケーションができない原因 

①誤った固定観念に囚われている

人が行動を起こすときには「こうしよう」という判断をします。その判断は、その人の「考え方(行動理論)」が影響を与えています。考え方は知識や過去の成功体験などから、「こうすべきだ」というような価値観として定着します。

よくあるパターンとして、「自分たちの若い頃はこうしてきた(それでうまくいった)」「この対応は今までこのやり方と決まっている(それでやってきて不具合はないはずだ)」などのような、知らず知らずのうちに固定観念に囚われて行動していることがあります。

例えば、会議の際に部下から反論があがったときに、「部下は上司に従うものだ、反論があったとしても、指示に従わせるのが上司の仕事」という固定観念があれば、部下の意見を却下し、進めてしまうでしょう。部下はしかたなく(表面的には)従うことになります。このようなことが続くと、固定観念はさらに強化されます。上司は聞く耳を持たない、部下はいっても仕方ない、という関係になります。

②アサーティブ・コミュニケーションを片方しか身に付けていない

上司と部下のどちらか片方しかアサーティブ・コミュニケーションを身に付けていない場合は、以下のような状況になります。 3つ目のように、双方が身に付けてはじめて、意見が違っても議論を進めることができます。

アサーティブ・コミュニケーション2

③タスクのためのアサーションに偏っている

アサーションには「タスク機能」と「メンテナンス機能」があります。

「タスク機能」とは、課題解決のために、状況把握や分析を行い解決策を立て、そのために必要な明確な指示の出し方や行動を取るといった、ビジネスにおいては必要不可欠な機能です。「メンテナンス機能」とは、良い人間関係を維持し潤滑にするために、自分や相手の立場を考え受け止め、お互いに協力しようとする姿勢や声かけを行うといった、タスク機能を発揮するうえでも必要不可欠な機能です。
タスク機能とメンテナンス機能は完全に切り分けることはできません。どちらも重要な機能です。対話や議論や折衝のためのコミュニケーションスキルのようにタスク機能を捉え、そのスキルだけを磨いても、メンテナンス機能が働いている人間関係の場合とそうでない場合とでは、結果が違ってきます。

 

まとめ

アサーティブ・コミュニケーション3

上司との人間関係が離職の理由としてあがることが多い中では、このようなアサーティブ・コミュニケーションを組織で身に付けること、より良い人間関係を維持するためのメンテナンス機能もバランスよく修得することで、離職防止に役立てることができます。

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