あるセールスK氏の話をお伝えしたいと思います。
教材の営業会社に入社した頃から、K氏は、誰よりも成功したい、という思いの強い人でした。同期の仲間の中で一番になりたい、支社で一番になりたい、全社で一番になりたい。じゃあどうする?ということで、彼はセールストークに磨きをかけていきます。
お客様のあらゆる反対をイエス・バットで切り返せる想定反論集づくり。さまざまなセールステクニックの研究。好感度を与えるための、表情の作り方からネクタイの色の組み合わせ方まで。数え上げたら切りがないほどの話法やテクニックを、徹底したロールプレイングと現場での実践で、モノにしていきました。
そうこうするうちに、彼は望み通りナンバーワンにのぼりつめます。もちろん給与もウナギのぼり。しかし彼には「やったぞ!でも、本当にこれでいいのだろうか…」という、後ろめたさのみが残る日々が待っていた…。
トレーナーやマネジャーなども務めましたが、業績も低下し始め、営業という仕事そのものに疲れ果て、転職することになったそうです。彼の営業人生は成功と言えるのでしょうか?
いくら給与が良くても、一時的に業績が上がっても、最終的に「営業という仕事に誇りを持ち、毎日活き活きと働ける」のでなければ、もちろん成功とは言えませんよね?
では、なぜK氏の営業人生は失敗したのでしょうか? それは、彼の根っこにあった考え方でしょう。結局彼の行動のすべては「誰のため」と聞かれたら、「自分のため」でしかなかったからではないでしょうか。
行動科学者のダグラス・マクレガーという人が「その人の基本的な考え方が間違っていると、どんなに頭が良くても、どんなに努力をしても、たとえ運に恵まれていても、その人は決して成功しない」と言っていますが、まさにK氏は、基本的な考え方が間違っていたのでした。
「営業は、お客様のお悩みや問題を解決するお役立ち業。誇りの持てる仕事であり、自己都合の仕事ではない」
そうか、そうだったのか!
この考え方が肚に落ちた時、K氏は心の底から救われたような気がするとともに、新しい職場で成果が上がり始めたそうです。
営業にとって本当に大切なことは何かを、一つひとつ学びながら、共に成長していきたいですね!
*本原稿は、株式会社ジェック『行動人』から転載・加筆いたしました。