松下幸之助さんは、体が弱かったこともあり、人に仕事を任せることがうまかったと言われる。
自分一人では事業を進めることはできない。
人を信じて任せ、組織を作ることが必要だと自覚していたのだ。
では、どういう基準で人に仕事を任せるのか。
「適任であるか不適任であるか、最初はわからない」が、「60%くらい、この人やったらいけそうやな」と思ったら任せてしまうのだそうだ。
「色んな角度から見て、選っていくと。80点の点数を求めるような人がいたら、それに越したことはない」が、そういう人を育てるのにも時間はかかるし、その間にビジネスチャンスがなくなるかもしれない。
だから、60点程度の人に任せる。
すると中には100点満点の働きをする人もいるから、大丈夫だという。
(松下資料館 人材育成の考え方コーナーVTRより)。
実際、松下幸之助さんは、当時代表を務める松下電気器具製作所で、昭和8年に事業部制を打ち出し、自ら采配を振るわなくとも、事業が進むようにしかけている。
わずか創立15年のことである。
しかし、任せきりにして放っておくということはしない。
「任せて任せず」と、松下幸之助さんは言う。
報告を求め、時には助言をする。
気になるところには、現場に定期的に通うということもしていたそうだ。
「60%、できる」と思ったら仕事を任せるというこの発想は、仕事を通じて人を成長させることではないか。
期待された従業員は、期待に応えようと一生懸命頑張る。
力不足と思うのであれば、なおのこと力をつけようと努力する。
それを経営者として徹底して支援する。
それが松下幸之助の経営の神髄ではなかったかと思う。
また、人の短所をあげれば、きりがない。
そうではなく、人の長所を見つけ活かそうとしなければ、任せることはできない。
「美点凝視」の人でもあったのだろう。
近年、「60%で任せる」ということができない企業が多くなっているように感じる。
仕事上のミスは利益を損なうし、顧客の信頼を失うことに直結する。
わずかな失敗を恐れ、チャレンジさせない。
そうなると、経営者は60%の力を身に付けた人でも、任せない。
何かにつけ、口を出す。
やがて自主性は失われ、上の言うことを聞くだけの人を作ってはしまわないだろうか。
「任せて任せず」。
難しいことだが、人を育てる基本であることは、間違いない。
20180920 ジェックメールマガジンよりより転載しました。