経営者

近道は理念の浸透

経営者が経営理念やビジョンを浸透させる行動を積極的に取ること、伝播できる管理者を増やすことが、業績を上げ、お役立ちを増やしていくために遠回りのようで近道なのかもしれない。


先日、ある会社の創業社長と商談する機会を得た。
150名程度にまで成長したところだが、「私の言っていることが伝わってない。それは初めて聞きました、とよく言われるが、今まで何度も言ってきているのに」と嘆かれていた。

非常に高い志で会社を立ち上げた社長であり、素晴らしい事業を展開しているのだが、社長と同じ思考で行動できる人がいないのだ。
「がっかりするようなことがままあり、どうすればよいか」というのが相談だった。

客観的に見て、課題はたくさんあった。
・理念や行動指針はつくっているが、日常の具体的な行動に落としていない
・管理者はほぼプレイングマネージャーで、部下育成の前に数字を追っている
・トップ自らが若手と関りを持つ機会をつくっていない
・新人教育もほぼOJTであり、教える人の素質に左右される
・メンバーと管理者の定期的な対話がなされていない  等々。

トップがつくった成功モデルがあり、それを形だけ模倣しながら事業拡大を図ることができたのだろう。有効な市場と一定の業務の流れをつくっておけば、仕事は回る。
これは、多くの若い企業にありがちなパターンで、ある程度の規模になった時、組織としてやっていくための基本の構築を後回しにしてきたことに気づくのだ。

ともあれ、企業理念やビジョンにコミットメントしてくれる人を育てることしかない。
長年、一緒に働いている管理者クラスであれば、どこかで企業理念やビジョンに共感し、それを意識しながら行動しているはずだ。
第一歩は、管理者が社長の代理として、理念やビジョンを語ることができ、仕事の判断基準として現場に生かしていくことだと思う。

2022年度版『中小企業白書』には、2015年から2021年にかけての「経営理念・ビジョンの浸透状況(労働生産性の変化)」(p.156)という調査結果がある。
これによると、経営理念、ビジョンが「全社的に浸透している」ことから、「労働生産性の上昇幅が大きい結果」になっている。

経営者が経営理念やビジョンを浸透させる行動を積極的に取ること、伝播できる管理者を増やすことが、業績を上げ、お役立ちを増やしていくために遠回りのようで近道なのかもしれない。

2022/10/13 ジェック通信より転載

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