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パワーアップ実践講座 組織営業力強化編  変革を伴う新たな動きを組織に浸透させることができるマネジャーが共通してやっていること

変化し続ける市場。すでに変化すること自体が常態となっています。変化に適応できる営業、営業部門づくりのためのマネジャーの打ち手をは? 組織として変革を起こす際に多くのマネジャーがぶつかる壁、悪魔のささやきを打破するためのヒントをご紹介します!


《Q》下期より、営業の動き方を変える施策を出しました。私どもの営業メンバーは、お客様の現場に強く、現場担当者とは、競合他社よりもしっかりとした関係ができています。
しかし、上期は主要顧客先で、これまでになく競合に入り込まれました。
その原因を分析したところ、競合他社はお客様の上層部に働き掛け、案件化する前の構想段階から顧客に入り込んでいることが分かりました。
そこで下期より、会う人や会う層を広げ、お客様の部門長クラスに働きかけていくために、提案ツールなども用意して動いていますが、なかなか成果が出ないのです。
これまで現場担当者に働き掛けていたようにはうまくいかず、関係も変わっていきません。そのため、中堅、若手の動きに加速がつかず、半年経っても、一部の個人技に願っている状態です。評価の仕組みを変えようとも思いましたが、他の課とも絡むため、評価制度を変えることもできません。一人でも多く、新たな動きで成果を出したいのですが、壁にぶつかっています。(機械部品メーカー営業マネジャー 星野)

まずは、変革の現状を理解する ~悪魔のささやきがつきもの~
《A》星野さんが抱えている悩みは、組織として変革行動を起こそうとする際に、多くのマネジャーがぶつかることです。
新たな行動を起こし、すぐに成果が出れば良いですが、思うような結果が出ない場合が往々にしてあります。

なぜなら、新たな行動には、能力転換が必要なことが含まれるからです。
個人差はありますが、新しい行動を起こすと、これまでの活動以上にエネルギーがかかる場合が多いはずです。
ただし、新たな取り組みをしているのだから目標を下げても良い、一定期間は成果が出なくても良いという余裕がないことも現実でしょう。成果を出すために新たな行動にチャレンジするのであって、数字目標を追っている以上、新たな行動を取りながら目標を達成することが求められます。

従って、新たな行動を起こし、これまで以上にエネルギーや負荷がかかるのに、成果が出てこないと、
「こんなことをしていてよいのだろうか...」
「これで本当に成果が出るのか...」
「あの人だからこのやり方でもできるのであって、私には難しい...」という言葉が、頭をよぎります。

場合によっては、「そんなことやったって、成果は出ないよ」など、行動を変えようとしないメンバーが横槍を入れることもあります。

すると、「やはり、成果を出そうと思ったらこれまでのやり方で...」となりやすいのが、変革時に出てくる『実体』であるということです。



マネジャーが共通してやっていること
評価制度、仕組みは変えなくても、新たな行動を組織に浸透させているマネジャーは多くいます。
そのマネジャーが共通してやっていることを紹介します。

新たな行動に加速をつけることができるマネジャーと、そうでないマネジャーは、メンバーを認めるポイント、褒めるポイントが違います。

成果だけを褒めるのではなく、少しでも実行したチャレンジ行動を褒めて、認めるのです。そのためには、メンバーとの対話が欠かせません。特にプレイングマネジャーは多忙です。しかしながら、その多忙の中でも、変革行動を組織に浸透させる際、メンバーとの日々の対話を優先業務として組み込んでいます。

例えば、成果が出ていないメンバーと対話をしているとしましょう。
「確かに、今まで会ったことのない部門長に会いに行って、なかなか話題が広がらず、シャットアウトされたのは事実。ただし、これまでアボをとったことのない人にアボがとれたのだ。シャットアウトはされたが、この質問はできて、相手の考えを引き出せたじゃないか。大きな前進だ!」などです。

これまでとは違い、チャレンジレした行動を認め、褒めるのです。負荷がかかってもやってみたこと、チャレンジをしたことをメンバーに自覚させるのです。するとメンバーは、チャレンジ行動が『是』という認識になり、次には、「もう一歩踏み込んで聞いてみよう」と前に向かいやすくなります。

ある興味深いデータがあります。

IQテストの成績で、褒めるポイントを変える実験がありました。一つのグループは「賢さ」を褒め、もう一方のグループは「努力」を褒めました。

「賢さ」→「90点。あなたは賢いね。」「努力」「90点。あなたは努力したね。」
この結果、『努力』を褒められたグループは、その後、難しい問題にチャレンジする傾向が見られました。そして、もう一度IQテストを実施したときには、そのグループの成績が約3割アップしたのです。

逆に『賢さ』を褒められたグループは、自分は賢いという評価を守るために、難しい問題にチャレンジしなくなる傾向が見られました。もう一度IQテストを実施したときには、約二割も成績がダウンしてしまったのです。

この調査結果からも、チャレンジすることを『是』とする認識を作ることが、いかに重要かが分かります。この認識を持たせるのは、マネジャーの大きな役割です。



この変革行動の取り組みを通し、チャレンジを『是』とする土壌づくりを!
星野さんのメンバーにとって大きなチャレンジ、そして星野さんにとっても、マネジメントの大きなチャレンジですね。このチャレンジは、今回だけではないでしょう。
こうお伝えすると「えっ...」と言われるかも知れません。これだけ変化をしている市場環境では、変化をすること自体が、常態と言ってもよいかも知れません。

だからこそ、「変化ができる人」の育つ土壌を作ってください。その土壌とは、チャレンジを『是』とする土壌です。メンバーのチャレンジ行動を見つけ、認め、褒め、チャレンジを『是』とする認識を作ってください。

成果は、繰り返しのチャレンジ行動から生まれてきます。


*この記事は行動人451号より転載、一部加筆しました。

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