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ビジネスパーソンの悩み解決相談室 営業パーソン編 いきなりソリューション営業と言われても…

今回の営業パーソンは、会社の方針として「ソリューション(=問題解決)営業」が打ち出されたことに対してお悩みです。また、「お客様が自分自身で解決できない問題を、他の会社の営業パーソンが解決するなんてことができるのか…」とも。 「なぜ今ソリューション営業なのか」「営業の本質」について考えてまいります!


《Q》営業パーソンが、お客様の問題を解決するなんてできるのでしょうか?
私は産業機械の営業に長年携わっており、これまで自社の業績を支えてきたという自負があります。しかし会社の方針として「ソリューション(=問題解決)営業」を全面的に打ち出し、正直言って戸惑っています。
お客様が自分自身で解決できない問題を、他の会社の営業パーソンが解決するなんてことができるのでしょうか?

《A》できます。固定観念を取り払えば、ソリューション営業ほど楽しいものはありません
今回のご相談者(Bさんをお呼びしましょう)は、ソリューション営業になかなかなじめず、悩んでいらっしゃる方のようです。
まずは、「なぜソリューション営業なのか」を一緒に考えていきましょう。

そもそも営業とは、相手のお客様にとってどんな価値があるのでしょう。「価値なんてあるんですか?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、トップセールスとお客様との関係を考えてみてください。

業界を問わず、トップセールスはお客様ととても良い関係を築いてはいます。そして商談成立後に、お客様から「ありがとうございました!」と感謝されたりしていませんか?

たくさん売るということは、たくさんの相手の役に立つということ。つまり営業とは、商品を買っていただくことでお客様の役に立つ、「価値のある仕事」なのです。

では、お客様は何のために商品を買うのでしょうか。

今回のBさんの場合、Bさんから高額な産業機械を購入する会社は、何が目的なのでしょう。

それはBさんご自身がよくおわかりですよね。例えば、以下のような目的ではないでしょうか。
 ①メンテナンスコストを削減して製造原価を下げ、利益率を高める
 ②生産性を上げ、ライバルに対する競争力を強化する
 ③工場の自動化を進め、会社全体の人材をより有効に再配置する
これらの例をご覧いただけば一目瞭然ですね。明らかに自社の経営課題の解決、つまりソリューションが目的なのです。

ところで、営業という仕事はもうずっと前から存在しました。なのになぜ、今さら「ソリューション営業」なのでしょう。それには時代背景が密接にかかわっています。

営業に求められるものが変わった!
以前ならば、お客様自身が自社の問題をしっかりと把握できていました。なぜなら、わかりやすい経済環境の中で経営の舵を取っていたからです。したがって営業パーソンの価値とは、お客様のご要望に対してより早く、より的確に応えることでした。そんな時代に隆盛を極めたのが、フットワーク営業、奉仕営業、接待営業だったのです。

しかし、グローバル経済となった現在、そう単純に事は運びません。
どこかの国で起きた出来事が、めぐり巡って自社に甚大な影響を及ぼすようになったからです。加えて価値観の多様化により、ユーザーニーズのあいまい化に拍車がかかっています。

このような時代、経営者はまるで乱気流の中で操縦桿を握るパイロットのようなものです。読めない未来と複雑な市場に直面し、現状打破の打ち手はおろか、解決の方向さえ見えなくなっていることもあるのです。

つまり、これまで顕在化していたお客様の問題が、どんどん潜在化して、かつそのスピードには加速がついているのです。
問題が潜在化してしまっているのですから、フットワーク営業も奉仕営業も、もちろん接待営業も、それだけでは通用しませんよね。商談を通じてお客様の問題を明らかにし、それをお客様と共有して、一緒になって解決していける営業パーソン=ソリューション営業パーソンだけが選ばれる、そういう時代になってきているのです。

そうはいっても、今回のBさんのおっしゃるとおり、お客様ご自身が見つけられない問題を、どうやったら私たち「他社」の営業パーソンが発見できるのでしょうか。

この疑問には「固定観念」の落とし穴が潜んでいます。


発想を変えれば、ソリューション営業は楽しい!
なぜ「他社」ではできないと思ってしまうのでしょう。他社だからこそできるのではないでしょうか。ハッタリで申し上げているわけではありません。

人間は思い詰めると視野が狭くなるという特性を持っています。また、同じことばかり考え続けていると、思考は柔軟性を失っていきます。
ですから、私たち営業パーソンがフラットな気持ちで相手の悩みに耳を傾けることで、見えてくる現実はたくさんあります。

さらに、先入観にとらわれないわれわれの質問から、お客様が思いもよらない気づきを得るケースも少なくありません。
他社の営業パーソンだからこそ、お客様以上にお客様の問題を発見できる可能性が高いのです。

世に営業パーソンほど「何とか自分の取扱商品を認めてほしい。買ってもらいたい」と思っている人はいません。だからその商品にどんな可能性があるのか、誰もが日々考えに考え抜いています。そんな商品の持つ可能性(=効用)こそ、お客様が最も欲する知識なのです。

商品を語るのではなく、商品の効用を伝えることで、お客様が解決をあきらめかけていた問題に一筋、希望の光が差し込みます。希望が脳を活性化させ、お客様と営業パーソンが活発に意見を交わすところに「創発」が生まれ、やがて共に手を取り合って臨む課題が見えてきます。

固定観念を捨て、相手と自分の知恵を信じれば、「ソリューション営業ほど面白いものはない」と感じられる日も近いでしょう。


*この記事は行動人437号より転載・一部加筆しました。

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