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ビジネスパーソンの悩み解決相談室 営業パーソン編 口下手でも営業で成功できますか?

今回のお悩みは、住宅メーカーの営業パーソンの方からです。「夢のある仕事にひかれて入社したのですが、半年たっても全く成果を挙げられません。そもそも私は以前から口下手だったのです。そんな私が営業で成功しようなんてむちゃだったのでしょうか」 そもそも商談において「口上手」は必要なのでしょうか? 商談で一番大事なことを考えてまいります!


《Q》口下手でも営業で成功できますか?
私は住宅メーカーの営業パーソンです。夢のある仕事にひかれて入社したのですが、半年たっても全く成果を挙げられません。そもそも私は以前から口下手だったのです。そんな私が営業で成功しようなんてむちゃだったのでしょうか?

《A》大丈夫! お客様の「心」を動かしましょう。
今回のご質問は、住宅メーカー営業の方から、ご自身の口下手に関するお悩みですが、口下手な自分が営業で成功できるかどうかを悩む前に、商談において「口上手」は必要なのかを考えてみましょう。

まず、私たち自身がお客様の側に立って、商談をとらえ直してみましょう。なぜなら、買うか買わないかを決めるのはお客様の「心」であり、目に見えない相手の心を知るためには、相手の立場になってみるしかないからです。

さて、私たちがテレビや車、家や保険を購入する際、セールスマンが巧みな話術で購入を促すように働きかけてきたら、どのように感じるでしょうか?

また、デパートでスーツを見ているときに、店員さんがスッと寄ってきて、「こちらの色柄、お客様にピッタリですよ!今こちらの商品は...」と、立て板に水を流すように話し始めたら、どう思うでしょうか?

「今すぐ買うわけじゃないんだけどなあ」=違和感
「このまま話を聞き続けたら断りにくくなっちゃうなぁ」=不安感
「うまいことばかり言うけど、どこまで本当なんだろう」=さい疑心
「無理やり買わせる気じゃないか」=不信感
と、警戒心を抱いてしまうことも珍しくないのではないでしょうか。こんな心理のままではその人から買おうと思えるでしょうか。

もちろん、口上手が悪いわけではありませんが、それが必ずしも営業パーソンのメリットとなるわけではないのです。世の中で活躍している営業パーソンには、無口に近いタイプや、もともとはコミュニケーションが得意ではなかった方もたくさんいます。
実際、ある自動車の年間販売台数世界一記録保持者は、吃音症で会話に苦労していたという話があるくらいです。

口でなければ何で勝負?
では、売れる人と売れない人の違いは何でしょうか?
前述のとおり、買うか買わないかを決めるのはお客様の心です。

つまり、お客様の心を揺り動かし、「どうしようかなぁ」を「欲しいなぁ」へ、「欲しいなぁ」を「よし買おう!」へと変化させることができればいいのです。
どうすれば変化させられるか? その要因はたった2つです。
①お客様の心の中に希望を広げる
②お客様の心の中の不安を小さくする
もし、この2つを理解せず商談に臨んだら、口のうまい・下手にかかわらず、成功はしないでしょう。
①を満たすためには、相手のニーズをつかみ、ニーズに合致した提案をすることです。ニーズをつかむために求められるのは、流暢な説明ではなく、的確な質問と傾聴の姿勢です。
質問のスキルはトレーニングによっても上達できますが、肝心なことは目の前のお客様その人に興味を持つことです。興味を持てば質問も自然とわいてくるからです。そして傾聴の姿勢は、饒舌な人より口下手な人の方がむしろ長けているかもしれません。
②を満たすために最も大切なことは、営業パーソンへの信頼感ですが、①の要因を満たせる人は同時に②ほとんど満たしているのです。

お客様に興味を持ち、熱心に質問を投げかけ、お客様の話をしっかり俺く。ニーズの予測がついたらお客様に確認し、合意がいただけたら、そのニーズを満たすために一生懸命に提案を練り、誠実に伝える。

このようにお客様の役に立つためにやるべき事をしっかりと行う人が、お客様から信頼を得られないことがあるでしょうか。

住宅の営業といえば、こんな話があります。
ある家族が売り出し中の分譲地を見学に行きました。購入が目的というよりも、休日の外出がてら寄ってみたという程度です。しかしなんと小一時間後、その家族は35年ローンを組んでその分譲地に家を建てる決定をしていました。
もちろん、あまりに急な話だったので、ご主人と子どもたちはかなり渋っていました。ところがそれを説得したのは、分譲地を案内した営業パーソンではなく、奥さんだったのです。

一体何がそうさせたのでしょう

担当の営業パーソンは、ほとんど分譲地の売り込みをしませんでした。それよりも奥さんの価値観が何であるかを熱心に聴き、家族の健康に関心が高いことを知ったのです。そしてその後はただひたすら、その地域の豊かな自然、空気のおいしさ、ハイキングスポットのことなどを、体験を踏まえて一生懸命伝えたのでした。飾ることなく誠実に。

人も企業も、より良くより幸せになるためにモノやサービスを購入するのです。

したがって、その人や企業にとっての幸せとは何なのかを知ることが最も大切です。
だからこそ、「相手にとっての幸せが何かを知りたい!」、「その幸せを実現するお手伝いをしたい!」という《お役立ち精》の大きさこそが、営業としての成功を左右する鍵なのです。


*この記事は行動人436号より転載、一部加筆しました。

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