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ビジネスパーソンの悩み解決相談室 経営者編 中期経営計画プレゼンテーションのポイント

「新中期経営計画が好スタートを切るためにも全社に向けた発表を成功させたい!」革新性の高い戦略と高い目標を掲げた内容になっていればなおさらです。これまで新しい取り組みがうまくいっていない、頓挫してしまいがちであるなら、参考としていただけると思います。


中期経営計画の発表について、次のようなお悩みが届きました。

Q:「中期経営計画を発表する際に、留意すべき点を教えてください」

私の会社では、四月より来期の中期経営計画(新三カ年計画)をスタートさせます。さらなる飛躍に向けてビジョンを練り直し、業界の変化の大きさや速さを視野に入れて、革新性の高い戦略と高い目標を掲げた内容となっています。

そこで問題になるのは、私の会社は革新に弱いという点です。これは今年度が最終期となる現中期経営計画を見ても明確で、新しい取り組みについてはほとんどが中途半端、あるいは頓挫という結果に終わっており、新三カ年計画も同様になる恐れがあります。

そのような危惧を抱えながらも、新三カ年計画を全社員に発表する時期は近づいてきています。

新中期経営計画が好スタートを切るためにも、発表を成功させるには何に留意するべきなのか、助言をいただければ幸いです。

 

計画の中の「理念」「使命」に重点を置きましょう

革新性の高い中期経営計画はその浸透・実現が難しい、それはすべての経営者が感じることでしょう。

そしてそのスタートの成否を決める場としての発表となれば、その準備も大変なご苦労だと思います。しかし、中期経営計画は、その内容も各社各様であり、本稿で個別論としての助言は難しいと思います。

ここでは、ご質問内にある「現中期経営計画については、新しい取り組みが実現できていない」という状況を踏まえて、次期中期経営計画の発表を成功させるという観点から、ポイントを整理し、お答えしたいと思います。

 

社員の関心を未来へと向ける

中期経営計画はさまざまな内容(理念・ビジョン・数字目標・基本戦略・展開計画・部門戦略など)で構成されています。

そのため、すべてを総花的に説明しても、メンバーは受け止めきれないというのが実情です。

メンバーの立場で考えてみると、メンバーの最大の関心は、自分の部門の自分の業務にかかわる点、つまり自分の仕事はどうなるのか、その困難度はどうかです。自分にかかわる目の前のことには熱心ですが、全体については関心が薄い、それが普通であると言えます。

そして、そういった状態にあるメンバーは長・中期の計画内容は頭に入らず、目の前の革新の難しさしか受け止められなくなり、「そんな難しいことを言われてもとてもできない...」という心理が生まれます。

この心理は「変革のパワー」にはなり得ず、むしろ「変革のブレーキのパワー」となり、もし発表の場でそんな気分をまん延させてしまったら、発表は失敗となってしまいます。

発表の場では、いかに「変革のパワーを引き出すか」が重要であり、そのためにはメンバーの関心を中・長期の経営計画、つまり「未来」に向けさせることが必要でしょう。

ここに、中期経営計画プレゼンテーションの成功のポイントがあるのです。

 

お役立ちイメージで変革のパワーを引き出す

「未来」といっても、中期経営計画に掲げられていることの中には、売り上げ目標や規模など、さまざまな項目があります。

しかし、メンバーのパワーを引き出すことに主眼を置けば、まずクローズアップすべきは、「理念」や「使命」に裏打ちされた、近未来に実現したい社会、市場への「お役立ちイメージ」です。

これはその企業の「志」と呼んでも良いもので、その重要性は日本企業では昔から言われてきたことです。

しかし、今こそ、その重要性がクローズアップされる時代であり、中期経営計画の発表を「変革のパワー」を引き出すキッカケとするための、重要なポイントとなります。

あえて、「今こそ」と強調する理由は、今は国内だけではなく、地球規模で混沌の時代に突入し、将来に対して高まる不安(環境問題、人口問題、食料問題、金融不安等々)が、情報化時代の力を借りて一気にまん延しているからです。

このような将来への不安は、「より良い未来社会にしていきたい」という人類共通の願いとなって表れ、これも情報化の力を借りて過去に経験のない規模とスピードをもって世界中に広がっています。

そして、この認識は社員メンバーの中にも問違いなく育っており、「より良い未来をつくることに本気になって取り組みたい」「できることは積極的にやりたい」というメンバーも多く存在します。

これはまた、お客様にとっても同様であり、より良い社会づくりに本気になって取り組んでいる企業を支持したり、そのような企業をパートナーとして選んだりといったことも間違いなく生まれています。

こういった時代だからこそ、今、メンバーを本気にさせるのは、中期経営計画に込められた「より良い社会づくりへの思い」、そして、その思いが実現された「お役立ちイメージ」であると言えるのです。

それが全社で共有されたときに変革の必然が理解され、その中期経営計画に魂が入り、変革を成功させるパワーとなります。

中期経営計画の発表は、その成否を決めるほどの重要な場面です。強調したい点は数多くあると思います。

しかし、まずは「このような時代だからこそ、われわれの力で社会や市場に対してこのようなお役立ちをしよう」という思いを、その道を切り開く経営者としての信念として語り、変革のパワーを引き出すキッカケにする、そんな方向を目指して、発表に臨んでいただければと思います。

この一点を、新・中期経営計画プレゼンテーション成功に向けての参考にしていただければ幸いです。

 

弊社機関誌「行動人438号」より転載一部加筆しました。

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