組織改革

パワーアップ実践講座 需要創造のヒント~『受注のためなら、社内は協力してくれるもの』本当だろうか?~

営業がつかんできた受注案件。「この条件が可能であれば受注できる!」社内協力を求めたが快諾が得られません。 受注がなければお金も入ってこないのだから、「受注のためなら社内は協力してくれるもの」ではないか?! それは本当でしょうか? 社内連携のためのヒントをご紹介します!


《Q》新規受注の新しい取り組みほど、社内が協力してくれないため、成果が出ずに悩んでいます。
先日もやっとのことで、あるお客様と、この条件が可能であれば受注できるという合意ができました。
しかし、設計に依頼すると、「その納期では無理です」と非常に冷めた対応です。「このお客様に入り込めば、これからも継続的に受注ができるのだから」と説得しても、「優先順位があるから無理だ」の一点張り。予定を聞くと、社内の勉強会が入っていたりするようです。「そんなことは後にすれば良いことです。そもそも、受注をしなければ、お金が入らないはずです。設計部門は、営業の苦しみを全く分かっていませんし、何を考えているかも分かりません。
昔から、うちの会社は社内的に営業の立場が弱いのです。何度もこのようなことがあります。社内営業とは言いますが、社内が動いてくれない限り成果が出ません。何かヒントをいただければありがたいです。(機械メーカー営業 山本)

『受注のためなら社内は協力してくれるもの』という幻想を捨て、現実的に動こう

《A》確かに営業としてはきついですね。私も前職では、相当頭を悩ませました。山本さんが、突破するヒントになれば幸いです。
『受注のためなら社内は協力してくれるもの』=『幻想』と極端に表現したのは、立場が変われば、その通りではないからです。
正確には『受注のために、自ら適切に動けば、社内は協力してくれるもの』となります。

受注があって企業が成り立つことは、間違いありません。
ただし、『受注のためなら、社内は協力してくれるもの』という認識だけでは、社内を動かせない可能性があります。

そこで、立場が変わるとどんな解釈が出てくるかを、客観的に見てみましょう。
もし、山本さんが「全社の数字のために、あなたの重要顧客の担当を他の営業に渡してください。あなたの数字はなくなり、評価は低くなりますが、これは受注を促進するためなのです」と言われたら、山本さんは納得いくでしょうか。

自分の役割(営業数字)に対してシビアな人ほど、「何を言っているんだ!」となるでしょう。
受注があって企業が成り立つことは間違いありませんが、それぞれ各部門で役割、使命が違います。各部門において、各人が各役割を全うしようとしているのです。
各々の立場の役割や業務状況を知らずに大義名分だけを説得しても、相手は納得しないことが多いでしょう。



説得の第一歩は相手を知ること人を動かす基本は一「知って」、「つかんで」、「動かす」
ある営業担当者の例をご紹介します。
かつては山本さんと同様に悩み、「設計部門は何も分かっていない」と嘆いていたのに、あるきっかけから、社内で「設計部門を動かすプロ」とまで言われるようになったのです。

その方は、社内の飲み会でたまたま設計担当者と隣の席になり、酒の力もあり、日頃の不満をぶつけたそうです。
その設計担当者の対応が良かったのでしょう。しっかりと受け止めてくれた後、設計の業務の流れや、何を優先していて、何が大変なのかを丁寧に教えてくれました。

それを聞いて、「設計はそんなに大変なんだ...。その人数でそれだけの業務をやっているのか...」とがくぜんとしたそうです。
そして今度は、その設計の方にも営業現場を知ってもらおうと思い、営業現場に一日同行してもらったところ、設計担当者は、「営業はこんな大変なのか...」となり、お互いさまだったということが分かったそうです。

それ以降、お互いがそれぞれの業務で忙しいことは間違いないという認識をしっかりと持ち、依頼する際は相手の業務を聞くなど、お互いの業務状況を確認するようになりました。
さらに、依頼する上で、「何か私ができることはないか」という会話ができるような関係に発展したそうです。

今でもぶつかることも多々あるそうですが、以前とは全く違う認識で、働きかけることができているとのことです。社内からは、「何でお前の依頼は、そんなにスムーズに進むのだ!」と言われるほどだそうです。
その方いわく、「全ては、相手を知ることがスタートだった」と。

人を動かす第一歩は相手を知ることです。相手を知り、心を掴み、適切な手段を考えて動かしていく。『知って、「つかんで」、「動かす」のステップです。

 

お客様を動かす営業力があれば社内は動かせる。「社内だから...」をなくせば
お客様の意志決定者まであらゆるルートを使ってたどり着き、新たな取り組み内容を交渉し、合意に至る力がある山本さんなら、社内を動かせないはずはありません。

なぜなら、山本さんの質問には熱さが感じられるからです。山本さんほど、営業に情熱がある人が、このようなことでモチベーションが下がったらもったいない。乗り越えていく楽しみを持って、チャレンジしてください。

困難や壁にぶつかったとき、その脱出法、解決策を考えていく際に、人は成長していくことは間違いありません。お客様を動かす営業力があれば大丈夫!

大事なことは、『受注のためなら、社内は協力してくれるもの』ではなく、『受注のために、自ら適切に動けば、社内は協力してくれるもの』
まず、動かす相手を知ってください!


*この記事は行動人450号より転載、一部加筆しました。

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