「ビジネスにおける才能とは、自分一人の力で目的を達成できることではなく、組織やチームの一員として自分の能力を100%発揮できることです。それは経営者であろうが、社員であろうが同じです。
経営者も組織の一員として事業や社員の成長に貢献する必要がありますし、社員もチームや組織が成長するために何ができるのかを問われています。
直属の上司のために仕事をしているようでは、プロフェッショナルとしての責任を果たすことはできません」
(『ハーバードビジネスレビュー』ダイヤモンド社,2021年4月号,pp.29-30
株式会社ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長 柳井正氏インタビュー記事)
「組織の力を発揮する根本の思考」ともいえるこのような考え方を、ユニクロでは実現できているのだろう。
このような思考をジェックでは「フォロワーシップ」と呼ぶ。
「上司を活かし、チームを活かし、自分を活かす」という視点から組織活用を求める。
「私が社員に問いたいのは、「あなたは、この会社と一緒に何をしたいのですか?」ということです」(同p.31)
と柳井氏も言っている通り、 自分を活かすには、個人のビジョンが重要 だ 。
「私がやりたいのは、こういうことです」と、志が高い人もいるが、実態として、
個人のビジョンを実現しようと思って組織に入る人はどれくらいいるのだろうか。
就職時の動機には、それなりのことは言うだろう。
以前にも紹介したが、ドラッカーは『明日を支配するもの』の中で、「所をうる」という表現を使い、「自らの強みがわかってくる。自らの仕事の仕方もわかってくる。自らが価値を見出すもののわかってくる」のは、「二〇代半ばをかなりすぎてからである」と言っている。
(P.F.ドラッカー著『明日を支配するもの』, 上田惇生訳, 1999, ダイヤモンド社, p.212)
学生時代のキャリア教育に意味がないとは言わないが、自分の強みや活かし方が分かるには、それなりに時間がかかるということだ。
様々な試行錯誤を経て、自分が何者なのかを気付くのだが、その過程で、重要な思考も柳井氏が一言で言っている。
「自分の可能性は与えられたものの中でしか見つかりません」(同p.32)。
与えられた環境の中で、100%、自分の力を出していくことで可能性が広がり、できることが増えていくのだ。
そのような経験を踏んで、個人のビジョンは立ち上がってくるのが現実的だ。
コロナ禍の中、貴重な新入社員が入ってきたこの時期、「所をうる」までしっかりと育て上げたいと思う管理者は多いことだろう。
そのためにも、 チームのビジョンを明確にして、行動に落とし込めるような言語力を磨くことが重要 になる。
そのビジョンに共感した社員がその方向で強みを発揮できるようになれば、一人前のチームの一員となれる。
与えられた環境の中で、能力を発揮してもらうには、まずは、チームのビジョン共有から始めないといけないだろう。
2021/3/31ジェック通信より転載