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共感の落とし穴

管理者に必要になってきている能力には、「共感」があるということを以前に申し上げた。しかし、共感はいつも正しい方向に人を導くわけではない。心理学の実験をご紹介する。


管理者に必要になってきている能力には、「共感」があるということを以前に申し上げた。
共感し、自分の心の声に従うということは、道徳的に行動するための一つの方法でもあり、たいていの場合、正しい判断に人を導く。しかし、共感は、いつも正しい方向に人を導くわけではない。

そこで、共感の落とし穴ともいえる側面も提示しておきたい。

心理学の実験で、サッカーのイギリスマンチェスターユナイテッド(マンU)のファンを集め、「マンU」に対する想いを書かせる。その後、別の会場でチームを応援するビデオを撮影するということで、急いで移動させる。
その時に、マンUのユニフォームを着た人をわざと転ばせるところを見せると、9割の確率で助けるという。
しかし、ライバルチームのユニフォームだとその確率は3割に下がる。

ところが、事前のミーティングでマンUのファンを集め、「サッカー」についての想いを書かせる。同様に急いで移動させる際に、ライバルチームのユニフォームを着ている人が転んでも9割は助ける。
サッカー以外のジャージを着た人が転んでも、3割程度しか助けない。

つまり、基本、助けるかどうかは自分たちの仲間かどうか、つまり、共感しやすいかどうかで変わったのだ。
(ジャミール・サキ著,『スタンフォード大学の共感の授業』上原裕美子訳,2021,ダイヤモンド社)

仕事の指導の場面では、次のようなことが考えられる。
・経験したことのない部署に異動した管理者は、部下に共感しにくい
・部下が報告してきたものには共感できても、自己完結できる優秀な部下に共感する機会は少ない

共感力は、鍛えないとうまく使えない。
また、共感は、すべての部下に必要だが、それだけで、すべての部下の成果が上がるようになるわけではない。
部下を動かすには、通常の指導・育成、場合によっては叱ることが必要な場合もあることは、肝に銘じておきたい。

 

2022/7/21ジェックメールマガジンより

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