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ビジネスパーソンの悩み解決相談室 目標を高く設定したらメンバーとの統合がうまくいきません

メンバーに、高い目標にチャレンジして目標達成をしさらなる成長をしてほしい、そう思っていても、どうすれば・どう伝えれば、活き活きと前向きに取り組んでもらえるのだろうか。そんなお悩みです。うまくいかないのは「高い目標設定だから」なのでしょうか?


このようなお悩みが届きました。同じように悩んでいらっしゃる新任リーダーの皆さんの参考になればと思います!

お悩み:「メンバーと目標の統合ができません」
今期からリーダーとなり、各メンバーと今期の目標を統合するための面談をしていますが、いきなりつまずいています。思うようにメンバーと目標の統合ができません。
メンバーの中で特に高い目標にチャレンジしてほしい数名には、念入りに面談をして一緒に施策を考え、高いなりに目標を達成できる計画になったつもりです。
ただし、メンバーとの面談で最後に出てくる言葉には、「責任数字ですから、やらなければならないのはわかっています...」と受け身であり、「目標にチャレンジし、達成するんだ!」という自発性がありません。メンバーにとって納得した目標とは言い難いようで、すでに疲弊感が漂っています。
しかしながら、メンバーには目標を達成してもらわなければなりません。この状態で今期がスタートすることに不安があります。理想論を言うつもりはありませんが、各メンバーが目標に向かって活き活きとチャレンジし、成長してほしいのです。個人目標を高く設定し、本人と統合を図るのは思った以上に難しいと感じました。
このような時、皆さんはどのようにしているのでしょうか。ヒントがあれば教えてください。(販売部門リーダー)

目標統合がうまくいかない理由について考えてみましょう。
この方はリーダーとして着実に一歩を踏み出していますね。メンバーとの目標統合は、期初の最重要事項です。メンバーに対し、目標に向かって活き活きとチャレンジしてほしいという想いは素晴らしいですし、施策を一緒になって考える姿勢も良いですね。
さて、個人目標を高く設定するとメンバーと統合するのが難しいとありますが、仮に目標値を低く設定すればメンバーは目標に納得し、リーダーが望むように目標に向かって活き活きとチャレンジするのでしょうか?
質問内容には、目標達成のための施策はできているが、メンバーの勢いやエネルギーが感じられないことからも、「高い目標だから(原因)、統合ができない(結果)」と考えています。この原因を限定せず、他の理由も探ってみましょう。リーダーにとって、今後のヒントになるかもしれません。

高い目標にチャレンジするメリット・目的は何か

メンバーが高い個人目標にチャレンジすると、そのメンバーにとってどんなメリットがあるでしょうか? 自分がメンバーの立場になって考えてみましょう。業務内容によっても異なりますが、考えていくほど、一つひとつがどんどん拡がるはずです。
では、そのメリットを、各メンバーがどれだけ自覚しているでしょうか?
なぜ、このようなことを聞いたのかというと、仕事や日標の意味付けによって、その人のエネルギーの出方・知恵の出方・感情のわき方が変わるからです。「有名な寓話としてイソップ物語に出てくる「三人のレンガ職人」はご存じでしょうか。
ある旅人が、レンガを積んでいる三人の職人に「ここで何をしているのですか?」と尋ねます。
一人目は、「見ればわかるだろ。レンガを積んでいるんだ。やってられないよ」と答えました。二人目は、「ここに壁をつくっているのさ。まあ、これが俺の仕事なんだ」と答えました。
三人目は、「歴史に残る偉大な大聖堂をつくっているんだ! これが完成したら、世界中の人がここへ来て、家族の幸せや平和を祈るのさ。そして多くの人が救われる。素晴らしいだろう!」と答えました。

統合の困難度には仕事観や目標観が影響

この寓話は、やっていることは同じであっても、本人の意味付けによって、取り組む姿勢、エネルギーの出方、感情のわき方が変わってくる良い教訓です。
その仕事をどうとらえているか、その目標をどうとらえているか、どんなことをメリットとしてとらえ、何を目的に置いているのかということです。同じ仕事内容、同じ目標値でも、その人の仕事観、目標観により、とらえ方が変わってくるのです。
メンバーは、どんな仕事観、目標観を持っているでしょうか? リーダー自身はいかがでしょうか?
研修で知り合った方なのですが、何年も高い目標を達成し続けている方はこう話されました。
「私にとって、数値は自分が提供できた価値を知るためのものです。目標値は、今年は昨年よりもっと大きな価値を提供できるようにしていくための指標です」
この方は、高い目標値を自分の市場へのお役立ちの価値を高めるための指標としてとらえていました。
つまり、目標統合の困難度は、目標値の高さだけによるものではなく、その人の「仕事観」や「目標観」が影響しているのです。
※「~観」とはモノの見方。仕事とはこういうもの、目標とはこういうもの、という考え。

目標統合の面談で仕事観を見つめ直す

メンバーと再度面談する前に、各々に「この仕事を通じて、この目標にチャレンジすることは、自分にとってどんなメリットがあるのか」を考えてきてもらってはどうでしょうか。メンバーが自ら「仕事のメリット...仕事への意味付け...仕事観」へと見つめ直すきっかけとなるでしょう。
面談時には考えたことをお互いに話し合うと、新たな気づきが得られるかもしれません。
さらに、業務目標の統合と連動し、そのメンバーの成長目標を統合されてはいかがでしょうか。成長目標とは、この一年の業務目標を取り組むことにより、どんなことができるようになるかという指標です。
目標統合のための面談は、業務目標、成長目標を統合するプロセスを通じ、メンバーとリーダーの仕事観・目標観の見つめ直しができる場でもあるのです。

弊社機関誌「行動人439号」より転載一部加筆しました。

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